気候変動に伴う災害リスクにおけるジェンダー不平等への取り組み

課題

女性と女児は、災害の被害をより受けやすく、脆弱な立場にあります。災害リスクの根本的な要因を追究するには、災害リスクにおけるジェンダー不平等を明らかにし、コミュニティの災害レジリエンス(強じん性)を促進する必要があります。 

自然災害、食料価格の高騰、疫病、長引く危機に伴うリスクは、それらを防止し、緩和し、軽減する試みよりも速いスピードで増加しています。過去10年間に、災害は70万人以上の命を奪い、17億人に被害をもたらし、1.4兆米ドルに昇る経済的損失を生みました。女性と女児は、気候変動の悪影響をより受けやすい立場にあります。 

女性が危機や被災後の状況においてより脆弱である根本的な要因が、女性に対する複合的な差別であることは研究で示されています。例えば1991年にバングラデシュで起きたサイクロンでは、20歳から44歳の男性の死亡率は1,000人につき15人だったのに対し、女性の死亡率は1,000人につき71人でした。同様に、インドネシアとスリランカでは、2004年発生した津波による死亡者の70%以上が女性でした。2008年にミャンマーで発生したサイクロン・ナルギスによる死亡者の61%は女性でした。国際社会の取り組みに基づき、本プログラムは仙台防災枠組みと持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献します。 

われわれの解決策 

UN Womenは、人命と生活手段の損失におけるジェンダー不平等を緩和し、気候変動により発生する自然災害に対する地域社会のレジリエンス(強じん性)と回復力を強化するために、このグローバル・フラッグシップ・プログラムを立ち上げました。UN Womenは以下の4点を優先領域としており、これらの変革を実現するためには、パートナー間の連携が必要です。 

UN Womenフラッグシップ・プログラム・イニシアチブ 

「気候変動に伴う災害リスクにおけるジェンダー不平等への取り組みと気候変動に伴う自然災害に対するコミュニティー・レジリエンス(強じん性)の促進」は、仙台防災枠組の実施へのジェンダー視点の効果的な統合と持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献するために設計された、UN Womenのフラッグシップ・プログラム・イニシアチブの一部です。 

  1. 災害リスクのアセスメントに従事する女性を増やし、性別・年齢別に分類化されたデータの収集を可能にするジェンダーに配慮したデータ収集手段およびツールを開発することで、災害リスクにおけるジェンダー的側面の分析、特に、危機に対する女性の脆弱性、能力、および曝露の面における分析を強化すること。
  2.  災害リスクにおけるジェンダー不平等を考慮した個別の政策対応を災害リスクマネジメント政策へ統合するよう促し、部門間かつ多様なレベルの調整メカニズムを促進し、ジェンダーに配慮した災害リスク削減を監督することで、ジェンダーに配慮した国家レベルの災害リスクマネジメント政策およびガバナンスを促進すること。
  3. 国家および地域レベルの予算配分が、特に産業・社会インフラおよびサービスにおいて、ジェンダーに配慮した防止策、事前準備、回復力を考慮するよう促進することにより、ジェンダーに配慮した防止策、事前準備、回復力のための資金におけるギャップを縮小すること。ジェンダーに配慮した民間セクターの投資や、社会的保護と社会保障のような適切な金融商品が展開され、更にそれらに女性がアクセスできるよう確保する必要があります。
  4. ジェンダーに配慮した早期警戒および早期行動システムを開発し実施すること、そして地域レベルの災害事前対策計画に女性の参加を増やすことで、気候変動に伴う災害を防止し、準備し、災害から回復する女性の能力を強化すること。 

プログラムの仕組み 

このイニシアチブは、グローバル・ポリシー・コンポーネントに支えられている各国と地域のプロジェクトの資産を含むグローバル・プログラムとして設計されています。 

このプログラムは、災害リスクという分野において初のグローバル・プログラム・イニシアチブとなるため、試験国での結果は体系的に集計され、改訂版UN Plan of Action for Disaster Risk Reduction for Resilienceも含む仙台防災枠組の目標に報告されます。このプログラムはサハラ以南アフリカ地域、カリブ海域、アジア太平洋地域の5つの国々で試験的に実施されます。UN Women Global Policy Support Unit on DRR (Disaster Risk Reduction)は、地域事務所とカントリーオフィスに対して、データの収集・監督・評価、知識生産、そして研究能力を向上するために、技術協力とアドバイザリーサービスを提供します。 

数字で見る災害リスクにおけるジェンダー不平等 

  • 1991年にバングラデシュで発生したサイクロンにより、140,000人が亡くなりました。20歳から44歳の男性の死亡率は1,000人につき15人だったのに対し、女性は1,000人につき71人でした (Mushtaque 1993)。
  •  2004年に起きたスリランカとインドネシアの津波の死亡者の70%以上は女性でした(UN ESCAP 2013)。
  • 2008年にミャンマーで発生したサイクロン・ナルギスによる死亡者の61%は女性と女児でした。特に被害が大きかった村では、18歳から60歳の女性の死亡率は男性の2倍でした(Myanmar Government, ASEAN & UN 2008)。
  • 2015年のネパール地震における女性と女児の死亡率は55%に昇りました(UN Women 2015)。

・災害リスクのジェンダー的側面に関する情報や理解は未だに不足している状態です。兵庫行動枠組の中間審査で報告した70カ国のうち62カ国は、ジェンダー別の脆弱性や能力に関する情報を2009年から2011年の期間、集計していませんでした。

 変革のためのパートナーシップ 

これらのプロセスと結果を生む環境を整備するためには、多様な関係者の動員、調整、そしてキャパシティ・ビルディングが求められます。 

UN Womenは、 国連国際防災戦略事務局(UNISDR)と密接に連携しながら、国連機関内、加盟国、女性機関、女性団体、そして市民社会団体と企業・地域・国レベルで結んでいる戦略的なパートナーシップを発展させていきます。フラッグシップ・プログラム・イニシアチブは、直接的にフィールドに関わりながらグローバルに実施されている国連ジョイント・プログラムにまたとない機会を与えます。このプログラムは、仙台防災枠踏みの実施と持続可能な開発目標 (SDGs)の実現に貢献すべく設計されています。