IMPACT 10x10x10 大学版ジェンダー平等報告書

エマ・ワトソンUN Women親善大使(中央右)とプムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長(中央左)をインパクト10x10x10のチャンピオンたちが囲んで。写真: UN Women

ニューヨーク:第71回国連総会開催期間中の9月20日に、UN Womenは、初の「HeForShe IMPACT 10x10x10 大学版ジェンダー平等報告書(University Parity Report)」を発表しました。この画期的な報告書では、世界の主要10大学がそれぞれの具体的なコミットメントを説明し、ジェンダー平等の実現に向けた進捗状況を明らかにしています。HeForShe IMPACT 10x10x10は、各国首脳10名、世界的企業のCEO10名および大学の学長10名をインパクト・チャンピオンとして 選び、企業、大学、国政レベルにおけるジェンダー平等の実現を加速させる取り組みとして、2015年に立ち上げられました。

この取り組みを推進する世界の10大学として5大陸8ヵ国から選ばれた大学は次の通りです。

名古屋大学(日本)、ジョージタウン大学(米国)、パリ政治学院(Sciences Po)(フランス)、ニューヨーク州立大学ストニーブルック校(米国)、香港大学(香港)、レスター大学(英国)、オックスフォード大学(英国)、サンパウロ大学(ブラジル)、ウォータールー大学(カナダ)、ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)。

世界人口の半数以上を30歳未満が占め、大学卒業率が上昇を続けるなか、大学が世界を変えることのできるまたとない機会が到来しました。今回の報告書では、大学における重要かつ重大なジェンダー不均衡 として、1) 教職員における男女比、2)男女の専攻分野の偏り、 3) 研究職・専門職への平等な就業機会と対照的に少ない女子学生の数、の3つの課題が特に取り上げられています。

「人格形成期に、このような教育を受けた大学生の世代は、世界が前進するための新たな機会となります」とプムズィレ・ムランボ=ヌクカ国連事務次長・UN Women事務局長は述べました。「現在、インパクト・チャンピオンがジェンダー平等への障壁に立ち向かうためのイニシアティブを牽引していることで、私たちは新たなる希望をもって、HeForSheの卒業生の今後に、そして学術界の変化に期待を寄せることができるのです。」

このレポートの発表は、参加大学によるIMPACT 10X10X10イニシアティブの初年度が完了したことを記念するものです。本レポートでは、インパクト・チャンピオンになっている各大学が、今後毎年進歩を測定していく上での基準となる、生徒や教職員の女性比率などの値を明らかにしており、学士・修士課程や教職員、学内での指導的役割などに関するデータを公表しています。

10の大学は、合計30のコミットメントにおいて進歩を測定すると宣言しています。インパクト・チャンピオンのうち70%は、職員のジェンダー格差を縮小するとし、また40%は学術部門のジェンダー格差を縮小し、30%はジェンダー平等のための研究拠点の創設、40%がキャンパス内での暴力の撤廃を約束しています。

「すべての女児や女性のエンパワーメントなくしては、持続可能な開発は不可能であり、平和は続かないでしょう。」イリーナ・ボコヴァUNESCO事務局長は述べました。「新たな世界的なアジェンダの側面が見えます。12歳の少女が結婚や仕事を強制されることなく、学校に行くことができている姿が。20歳の女性が、大学で知識を創造し共有する姿が。」

2014年にHeForSheを発表し、レポートの発表に立ち会ったエマ・ワトソンUN Women親善大使は「良い大学とは、小さな理想郷のようなものです。社会全体の理想の姿を示すミニチュアモデルなのです。全てのIMPACT チャンピオンが、ジェンダー平等を生徒たちの教育の中心に据えることを約束したのです」と述べました。

HeForShe IMPACT 10X10X10参加大学による、キャンパス内でのジェンダーに基づく暴力に関する特別報告

ジェンダーに基づく暴力は、キャンパス内の安全における深刻な問題であり、かつ世界中の学生たちに対する教育的機会でもあります。

世界で3人に1人の女性たちは、人生の間に何らかの身体的及び性的暴力を経験すると言われています。多くの被害者たちは、羞恥心や罪悪感、そして恐怖によって沈黙を保ったままです。男性及び男児もまた身体的及び性的暴力の被害者となりますが、その行為を当局に対して報告する確率は統計上さらに低くなっています。また、LGBTの生徒に対する脅迫や暴力事件の件数が、より多い国もあります。

HeForShe IMPACT 10X10X10イニシアティブに参加する10の世界的な教育機関は、より幅広いHeForSheプログラムの一環として、国連で合意された行動プログラムを開始しました。その中には、キャンパス内でのジェンダーに基づく暴力撤廃に取り組む画期的なプログラムが含まれています。

5つの大陸の8ヵ国にまたがり、700,000人以上の生徒と40,000人の教職員に影響を及ぼすこの10のインパクト・チャンピオン大学だからこそ、強力に変革を促進することができるのです。

インパクト・ チャンピオンとなっている各大学は以下のことに協働して取り組みます:

  • 性的暴行に対するゼロ・トレランス(毅然たる対応)で方針を確立します
  • 全キャンパスを対象に、トレーニングやブリーフィングを全ての教職員、学生に提供します
  • 学生のアイデアをHeForShe グローバルアイデアソン(Global ‘Ideathons’: 世界共創型イベント)を通して実行に移します

HeForSheプログラムを通して、特定のコミットメントや目標が新たに各大学と合意され、世界規模の実践的な変革のモデルを創出しています。

各大学は、キャンパスにおけるジェンダーに基づく暴力に関して、学生たちと協力することで現実的な解決策を強化できると認識しています。ジェンダーに基づく暴力撤廃のためのこの先駆的なイニシアティブでは、各大学のキャンパス内で今後3年間HeForSheグローバルアイデアソンを導入し、学生たちの主導の元、共同で解決策を探り、創造していきます。全てのインパクト・チャンピオン大学にとって、ジェンダーに基づく暴力の問題に取り組むことは、絶対的な優先事項です。他の大学のための足跡を残すことから、このイニシアティブによって創出されるモデルは、ジェンダーに基づく暴力を根絶するための世界的なキャンペーンの中心的な役割を果たします。

University IMPACT Champion:

ジョン・J・デジョイア(ジョージタウン大学学長)

ジョージタウン大学は、HeForSheを支援し、女性及び女児のエンパワーメントや平等・人間の尊厳の創出や世界での繁栄に取り組めることを誇りに思います。

ピーター・マジソン(香港大学 学長・副総長)

真の変革を起こすためには、文化を変え、システムを変え、持続可能で長期的な政策の転換、そして共通のコミットメントが必要です。私は、このイニシアティブに貢献できるよう、最善の努力を続けていきます。

ポール・ボイル(レスター大学 副総長)

HeForSheの#GetFree大学ツアーの開始を記念して9月に開催したイベントは、素晴らしいスタートとなりました。UN Women、ニッキー・モーガン教育大臣兼機会均等大臣、500名のスタッフや生徒たちをお迎えすることができ、喜ばしく思いました。約1000ものHeForSheコミットメントが2日で集まり、21人の教員がジェンダーに基づく研究の発表を行いました。また、私たちは、”We are HeForShe”と題したビデオを独自に製作しました。

松尾清一(名古屋大学 総長)

私は、あらゆるレベルでジェンダー平等に向けた社会的な変化を起こしていくために全力で取り組んでいます。UN Womenや他のIMPACT チャンピオンの各大学、政府、産業リーダーたちと、この重要な目標のために協力していくことを楽しみにしています。

ステファン・ゴス(オックスフォード大学 副総長)

オックスフォードは学寮から成る大学で、中央の大学と、38の自治学寮から構成されています。本学は世界で最古の大学の1つでありながら国際的な機関であり、常に世界の上位3校に位置しています。オックスフォードには2014年12月時点で22,348人の生徒が在籍しており、そのうち45%は女性です。また、11,000人の教職員のうち、教員の27%、研究者の45%の合計40%が女性です。教授のうち22%が女性です。

マルコ・アントニオ・ザゴ(サンパウロ大学 学長)

サンパウロ大学は、女性に対する暴力やあらゆる形態の差別などの社会的な問題に取り組むため、長期的に斬新な変革を強力に推進していきます。

フレデリック・ミオン(パリ政治学院)

私たちのジェンダー平等行動計画とHeForSheとの連携は、メッセージを全ての意思決定領域で促進することにより、プロジェクトを立ち上げ、迅速に進めていく上で機動力になっています。

サミュエル・スタンレー・ジュニア(ストニーブルック大学学長)

HeForShe IMPACT 10X10X10チャンピオンとして、ジェンダー平等の問題に組織として立ち向かい、持続的な変革を主導していきます。ジェンダー平等に関して問題提起していく意志と、その過程で自らを改善していくことこそが、変革を創出するのです

フェリドゥン・ハムドゥッラ-プル(ウォータールー大学 学長・副総長)

ウォータールー大学が、世界的なHeForSheの取り組みにおいてカナダの大学を先導することを誇りに思います。私たちは、情報科学やエンジニアリング、数学といった領域の学問を志す女性たちのために明確な道筋を作り出さねばなりません。そうすれば、21世紀の創造的な大学にはふさわしくない社会的な障壁を乗り越えることができます。

アダム・ハビブ(ウィットウォーターズランド大学 学長・副総長)

これは、ジェンダーに基づく被害を終わらせるための男性の役割が、消極的な傍観者ではなく積極的な参加者であることを保証するための戦いです。家父長制や不平等を根絶し、不公正なヒエラルキーから利益を得てきた人々も脱構築の対象となるのです。また、ヴィットヴァータースランド大学含め全ての大学が参加しなくてはならない戦いです。


Inaugural Launch of HeForShe IMPACT University Gender Parity Report

世界の主要大学によるジェンダー平等への挑戦