福嶌香代子UN Women日本事務所長インタビュー

UN Women日本事務所開所式を迎えるにあたって ―UN Women日本事務所の役割と今後の展望への意気込み―

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2015年8月、東京都文京区においてUN Women 日本事務所の開所式が行われました。この開所式に先立ち行われた福嶌香代子UN Women日本事務所長のインタビューです(聞き手:国連広報センター 根本かおる所長)。福嶌所長自身の経験と照らし合わせながら、UN Women日本事務所が担う役割と今後の展望への意気込みが語られました。

インタビュー記事は、国連広報センターのホームページでもご覧いただけます。

 

 

新事務所開設にあたって

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インタビュー聞き手:根本かおる国連広報センター所長

Q. 新事務所開設というのは、大変エネルギーが必要な作業ではないですか?

A. 本当に一からのスタートでした。例えば、これまでの仕事で当たり前のようにあったパソコンや事務用品などを国連の手続きに従って調達しなければいけなかったり、事務所のレイアウトを関係者の方々と相談したりしました。また、国際機関の駐日事務所の開設ですので、それに伴う手続きの際に外務省に口上書を提出する際に使う公印(スタンプ)のデザインを考えるということもあり、普通では経験できないことばかりです。

Q. 国連でのお仕事は初めてですか?

A. 国連の仕事は2回目です。私は外務省の出身ですが、一度国連大学で働いたことがありまして、そこでは日本の大学で勉強している開発途上国からの留学生を支援するための育英資金貸与プログラムの立ち上げを担当しました。今回の国連でも立ち上げの仕事を担当することとなりました。

 

 

日本における女性のエンパワーメントと男女共同参画への課題

Q. 女性の社会進出、権利向上などが日本で大変注目を浴びる中で東京に事務所が開設になりますが、その点においてはどのような抱負を持って臨んでいますか?

A. 日本政府が力を入れている政策に連携して、UN Womenのこれまでの取組や経験を活かせるようにしていきたいと思います。また、色々な活動を進めていく上で、一般の方にもUN Women がどのような機関であるかを知って頂きたいので、様々な方たちと連携して色々な協力やアウトリーチを進めたいと思っております。

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根本かおる国連広報センター所長(左)と福嶌香代子UN Women日本事務所長
Q. 日本で安倍政権が女性活用を呼びかけている反面、日本での女性をとりまく地位は国際的に見て高くはありません。どのような点に着目して、日本の取組を支援していきたいと思っていらっしゃいますか?

A. 一つには、安倍総理が力を入れられている経済面での自立ですね。これはUN Women も優先分野として活動しております。また、日本が国連の場でも貢献している平和維持活動や防災への取り組みなどについても、ジェンダーの配慮はこれからますます重要になっていくと思います。

 日本では東日本大震災など、色々な災害で女性が被害を受けるということはとても多いと思うのですが、それらの復興に向けて女性の力を活かすことが非常に大切です。その点についてUN Womenは、復興計画の中にジェンダーの配慮をする形などでの復興支援の活動をしているので、そのようなところを連携していければと思っております。

これらの分野に限るということではありませんが、特に日本が優先課題として取り組んでいるところを含めて、UN Womenが連携して取り組んでいければと思っております。

Q. 被災地の女性から漁業組合の組合員資格が女性は事実上排除されているとうかがい、驚いたことがあります。

A. 漁業とは少し違うのですが、世界でも例えば農地の所有権が女性には与えられていないにも関わらず、実際に農地を耕し作物を育てているのは女性であるという現実がありますね。そういった場合、UN Womenでは、農業でしたらFAOなどど連携して活動するわけですが、その中で例えば女性がある村で新しい農業の取組をする際に、女性が参画するようになってからその取組が成功したという例も報告されています。そのような形で、女性参画の機会を増やすことが全体の利益につながると認識するなど、そういった施策が続くと非常に良いと思っております。

 

 

UN Womenが行っている取組

Q. 女性に目配りした制度を作るには、政治の場での女性の参画が大変重要になると思いますが、下院における女性議員の割合を見ると、日本は10%未満で、世界で114位ですね。女性の政治参画を促進する上で、日本ではどのような取組が必要だと思われますか?

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福嶌香代子UN Women日本事務所長(左)と根本かおる国連広報センター所長(右)
A. 直接その問題に「こういう風にする」といった解決策を今の時点では持ち合わせていないのですが、一つにUN Women が昨年の9月から行っている「HeForShe」というキャンペーンをご存知でしょうか?女性の参画・平等を進めるためには男性の理解と協力が必要ということで、女性の平等とジェンダーのエンパワーメントに賛同いただける男性を中心に署名を頂いて、その活動が今世界中で広がりを見せています。このキャンペーンを促進するために、今年の1月の世界経済会議ダボス会議でUN Womenが、10の国の元首、10の大学指導者、10のビジネス指導者、に参画を頂いて更に取組を進めていく「IMPACT 10×10×10(インパクト・テン・バイ・テン・バイ・テン)」というイニシアティブを発表しました。この取り組みに安倍総理に参加いただいたという例がございますので、こういうところからさらに活動が広がっていけばいいと思っております。

また、政治関係とは別になるのですが、IMPACT 10×10×10に名古屋大学に参加いただきました。名古屋大学では学内だけではなく、政府ですとか民間の色々な関係者の方々と連携して女性の参画、エンパワーメントを進めてくださるとういことですので、非常に心強く感じておりますし、協力していければと思っております。

Q. ビジネス界では、日本は女性のエンパワーメント原則(WEPs)に署名している企業の数はもっとも多い国ですね。企業トップのコミットメントが社内での施策や、女性の採用・昇進などにつながればいいのですが。

A. WEPsを署名いただいていて、まだその7つの原則のそれぞれに、例えばこの企業の新しい活動やサポートはどれに相当するのか分かりづらいところもあることは伺っています。そういうところはもうすでに専門家の方々もいらっしゃいますし、うちの事務所のほうで照会がありましたら、連携して対応できるようになればいいと思っております。

 

 

今後の展望への意気込み

Q. ジェンダーの問題は本当に各人一人ひとり意見を持っていて、様々な議論が巻き起こる問題だとは思いますけれども、国連という立場でそういったものを一手に引き受けられるということでどのような意気込みをもっていますか?

A. 今まで外務省の中で色々な国の色々な人の考え方を聞いて、交渉・相談をして、できるだけ折り合えるところで合意していくような経験がありましたので、そういうものが活かせればといいと思います。

Japan_Interview_福嶌香代子UN Women日本事務所長
福嶌香代子UN Women日本事務所長
Q. 福嶌さんが個人的な思いもあって、ぜひこれは力を入れてやりたい分野や取組はありますか?

A. やはり日本にとってUN Women事務所が役立つ、つまりできてよかったと思って頂けるようにするのが一番なんですけれども、一つには、私自身も子どもを育てながら仕事を続けてきたこともありますし、たまたま二人とも娘ですので、そういう若い世代、若い女性にとって将来がより良いもの、つまり機会がある輝かしいものであってほしいなという個人的な願いもございます。

Q. 今後企画・計画していらっしゃるイベントや取組はありますか?

A. 8月30日に、文京シビックセンターにおいて、事務所の開所式を予定しております。これは、「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム World Assembly for Women in Tokyo: WAW! 2015」の会議が8月28日・29日に行われるのに続き、8月30日に予定しています。ムランボ=ヌクカUN Women事務局長はWAW!に加え、この開所式に出席します。秋は大学と共同してのシンポジウムですとか、女性に関する会議に出席させて頂いて、UN Womenの活動について報告させて頂くことを計画しております。そして、11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」はUN Womenにとって非常に重要な記念日です。毎年オレンジをテーマカラーに、12月10日の「人権デー」までの16日間を「性差別による暴力をなくすためのキャンペーン期間」(16 Days of Activism against Gender Violence)として、オレンジのライトアップイベントなど、世界中で様々なキャンペーンを行います。日本でもそれに倣って、女性に対する暴力撤廃について人々の関心を高めるために、何か企画できればと思っております。