国際女性デー(3月8日)シンポジウムを開催しました(UN Women日本事務所・外務省・文京区共催)
国際女性デーを記念したシンポジウムを文京シビックホールにて開催日付:
国連が国際女性デーとして定める3月8日、文京シビックセンター(東京都文京区)において国際女性デーを記念したシンポジウムを開催しました。
同シンポジウムは、男女平等な世界の実現に向けて、国連の新しい開発目標である「持続可能な開発のための2030アジェンダ」におけるジェンダーの視点を含め、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを加速するための議論を目的に、UN Women日本事務所が外務省および文京区の共催により開催したものです。
シンポジウム内では、成澤廣修文京区長、白石和子外務省女性・人権人道担当大使、福嶌香代子UN Women日本事務所長による挨拶に続き、持続可能な開発のための目標(SDGs)と女性のエンパワーメントに関する紹介ビデオ上映を行いました。その後、根本かおる氏(国連広報センター所長)をモデレーターとして、西岡達史氏(外務省国際協力局地球規模課題総括課長)、福嶌香代子氏(UN Women日本事務所長)、近藤哲生氏(国連開発計画(UNDP)駐日代表)、原 智佐氏(国際協力機構社会基盤・平和構築部ジェンダー平等・貧困削減推進室室長)をパネリストに、「持続可能な開発のための2030アジェンダとPlanet50-50: ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けて進歩を加速」というテーマでパネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションでは、国際社会を舞台に活躍する登壇者らが、SDGs採択に至る経緯、SDGsにおけるジェンダーの視点、目標の達成に向けた取組み、日本の貢献等について議論を行いました。「SDGsは世界中のすべての人によるすべての人のためのアジェンダ」であるという考えに基づき、SDGsの目標やジェンダー平等の達成のためには女性を含め、多様な主体が協働し包括的に取組む必要性を強調しました。
また、パネルディスカッションに続いて行われた質疑応答のコーナーでは、「日本におけるジェンダーギャップを解消するためには?」や、「アカデミック分野における女性を増やし、活躍できるようにするには?」といった来場者からの質問に対し、グローバルパートナーシップなマルチステークホルダーといった考え方が鍵となることが強調されるとともに、「一人一人のアクションなくしては、ジェンダー平等は達成されることがない。このシンポジウムを契機に、自分事として何ができるかを考えてもらいたい。」というメッセージが来場者に贈られました。
◎冒頭あいさつ
成澤廣修文京区長は、文京区が歴史的に女性教育や女性の問題に対して関心が高い地域であること、また、UN Women日本事務所が文京区に開設されて以降協力して行ってきた取組み事例などを紹介しました。また、「女性の問題は男性の問題でもある」という区長自身の信念のもと、自治体のリーダーとしてジェンダー平等に取り組んでいく所信を述べました。
白石和子大使は、「女性の活躍を推進することは社会全体の活性化につながる」という考えに基づいた日本政府による女性活躍促進に関する様々な活動を紹介しました。また、女性をエンパワーメントすることは、日本だけでなく世界規模での課題であり、2030アジェンダの目標達成に向けて日本政府が積極的にリードしていくことを強調しました。
福嶌香代子UN Women日本事務所長は、国際女性デーの意味やUN WomenおよびUN Women日本事務所の役割とこれまでの活動について紹介しました。そして、シンポジウムの論点である「Planet 50-50 by 2030: Step It Up」について、2030アジェンダにおけるジェンダーの視点を含め、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを加速するための議論をシンポジウムを通じてみんなで考え、連帯を深める機会にしたいとを述べました。
◎パネルディスカッション(以下登壇者敬称略)
~持続可能な2030アジェンダ採択に至る経緯とこれまでの取組み~
近藤:国連設立の経緯と変遷について説明。東西冷戦以降「人間の安全保障(Human security)」という概念が登場し、ミレニアム開発目標(MDGs)につながった。持続可能な開発目標(SDGs)はMDGsで達成できなかった目標を次の15年間で達成するための新たなアジェンダ。
福嶌:SDGsにおけるジェンダーの視点について。SDGsの目標5はジェンダーを中心課題とした目標であり、男性/女性だけでなく多様性の尊重を掲げており、包括的なアプローチを要する。また、その他のSDGsの目標においてもジェンダーに関する視点が盛り込まれている。
西岡:SDGs策定の経緯については、国連の専門家主導で策定されたMDGsと対照的に、SDGsは政府間交渉を重ねて策定されたため、すべての国が自ら策定に加わった目標との認識。日本政府は様々なイベントや会合を通じ議論の推進に貢献。ジェンダー分野では、持続可能な開発の実現への女性の参画、開発の恩恵を女性が受けられる「女性が輝く社会」の考え方、防災をはじめとする社会開発のすべての場面での女性のリーダーシップ発揮を重視した。
根本:MDGsは開発途上国の課題が中心であったが、SDGsでは先進国を含め世界全体で取り組まなければならない課題が盛り込まれている。
西岡:日本政府が関係省庁横断的に連携して取り組むのみならず、民間企業、市民社会、有識者等のマルチステークホルダー(多様な利害関係者)の協力によって、日本全体で地球規模の課題に取り組むことが重要。
根本:2030アジェンダは、世界中の個人、民間企業、アカデミアなど様々な主体によって作られた、みんなによるみんなのためのアジェンダ。
~各機関によるジェンダーの視点とは~
原:JICAによるジェンダーの視点について事例紹介。ケニアの農業における男女分業の徹底から気づいたこと。生産体系や経済体系などを改善するためには、女性へのアプローチが必要かつ重要。
近藤:UNDPによるジェンダーの視点について事例紹介。チャドにおける妊産婦死亡率を減らすための活動。女性に知識や経験などエンパワーが向かえば、開発はすべて上手くいく。
福嶌:UN Womenの役割のひとつとして、ジェンダーに関する指標作成・モニタリングの活動を紹介。
西岡:開発協力に関する日本政府の政策としてGAD(ジェンダーと開発)イニシアティブの紹介。その後2030アジェンダや開発協力大綱といった新たな変化を踏まえ、ジェンダー主流化に加え、男性の意識改革や、女性の能力強化、リーダーシップ向上支援などを含む新たな政策を打ち出すべき時に来ている。
原:現場の事例紹介。災害に対して女性は強靭性(レジリエンス)を備えていない。身体的な差だけでなく、社会的な差別や障壁によって女性が不利な状況にあり、改善が必要。
根本:結びのメッセージ。一人一人のアクションなくしては、ジェンダー平等は達成されることがない。このシンポジウムを契機に、自分事として何ができるかを考えてもらいたい。
◎パネルディスカッションQ&A
Q1:アカデミック分野に女性を増やすには?また、女性が活躍するには?
福嶌:アカデミック分野における取組みが活発になっている。卒業生による大学訪問など。また高校生の段階で選択肢を広げてもらえるよう、若い世代へのアプローチが盛んに行われるようになってきた。女性が専門性の高い分野において活躍するためには、男性からの支援と社会的な支援の両方が必要。
Q2: 日本におけるジェンダーギャップを縮小するためのヒントとは?
福嶌:日本は、教育や福祉に関するジェンダーギャップは大きくないが、政治や経済分野におけるジェンダーギャップが非常に大きいため、これらの分野に対する積極的な働きかけが必要。
西岡:グローバルゴールとしてのSDGsをそれぞれの目標達成のために使っていく発想が必要。2030アジェンダの基本理念としてグローバルパートナーシップとマルチステークホルダーがあるが、これらの考え方が問題解決の鍵となる。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは途上国・先進国共通に取り組むべき課題であるし、本日のイベントは自治体、市民社会を含めマルチステークホルダーの実施に向けた良い取り組み。