タイで日加高官が現地視察:人身取引防止に対する女性のエンパワメントのインパクトを紹介

日付: 2019年1月14日

レスリー・デイヴィス、金子雄大

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1タイ・ミャンマー友好橋に立つ女性入国管理事務所職員。Photo: UN Women/Stephanie Simcox

 

タイ、バンコクタイ国メーソートにあるタイ・ミャンマー友好橋の上に立つと、往来する人々の多さに圧倒されずにはいられません。1日に橋を渡る人の数は1万人にも上り、橋下の川をボートで渡る数はさらに多くいます。113日(日曜日)、日加両大使館の高官による訪問を受けたタイ入国管理事務所当局者は、今年4月に第2友好橋が完成予定であると述べました。これにより、地域の貿易と人の動きは拡大することになります。このタイ・ミャンマー間の往来の拡大は、同地域に新たな成長を約束するものですが、一方の負の側面として、これに乗じて人身取引やそのほかの越境犯罪が助長される可能性もあります。こうした悪影響を抑えつつ、国境地帯のコミュニティが成長の恩恵を最大限享受するにはどうすればよいのでしょうか。

 

在タイ国のカナダ大使ドニカ・ポッティ女史と日本大使館一等書記官植野真実氏はメーソートを訪れ、UN Women(国連女性機関)とUNODC(国連薬物・犯罪事務所) の国連2機関が実施する合同事業を視察しました。人身取引防止並びに今後増大が見込まれるタイ・ミャンマー間の往来が助長する可能性のある負の影響の抑制に対する取り組みについて説明を受けました。

 

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タイ国メーソートの入国管理事務所・国境職員がUN Womenアジア太平洋地域事務所アナ-カリン・ジャフォーズ所長臨時代行(左から3人目)、在タイ国ドニカ・ポッティカナダ大使(右から3人目)、在タイ国日本大使館植野真実一等書記官(右から2人目)を施設見学に案内。Photo: UN Women/Stephanie Simcox

 

ミャンマーの国境県は経済的機会が乏しい状況です。そのため、数年前に第1友好橋が開通して以来、多数の移民がメーソートへ定常的に流入しています。今日、市内にはミャンマーからの移民がおよそ12万人居住していますが、このうち65%が非正規移民と考えられています。このことが、特に女子や女性が人身取引の被害に遭いやすい危険な状況を生み出しているのです。

 

「法的地位を持たない人は雇用主にその弱みを容易に付け込まれる。」 UN Womenのパートナーとして当該地域で活動をするNGOライツ・ビヨンド・ボーダーズ代表のアンピカ・サイボーヤイ女史は語ります。「低い賃金での労働を受け入れがちになるし、地元当局を恐れて届け出もしない。そのため、常によりよい仕事口を探している。だから、人身取引業者の言葉は魅力的に聞こえてしまう。女性と女児は地域のセックス産業の拡大でさらに大きな危険性に晒されている。」

 

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メーソートに住むミャンマー人イスラム教徒コミュニティの女性。地域での生活や就労で直面する問題について議論する。地域の住人は多くがタイでの法的な身分を持たないが、メーソートは彼女たちの故郷であると語る。Photo: UN Women/Stephanie Simcox

 

ポッティ大使と植野氏はコミュニティの女性らを訪ねました。女性らは仕事を探すうえで直面する諸問題や、人身取引に対する認識の欠如がいかにコミュニティの人々をとりわけ危険に晒しているかについて詳しく語りました。視察に先立って行われたUN Womenとの非公開討議で、被害に遭った女性の一人、ベンヌさん*は、夫の友人からバンコクでの仕事口を紹介された経緯を話ました。「バンコクに着くと、ブローカー(斡旋業者)とほかに女性が二人いる家に閉じ込められた。ブローカーは私がその仕事に向かないと言い、バンコクまでの旅費を耳をそろえて返さなければ、身売りしてやると脅された。仏教寺院になんとか逃げ込み、僧侶に助けてもらってやっとのこと家に帰ってきた。」

 

ベンヌさんのような被害例は増加しつつあります。こうした問題に対処するため、UN WomenUNODC20184月から合同で、大メコン圏の5か国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)での越境犯罪、特に人身取引の影響を抑制する事業に取り組むことになりました。

 

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ミャンマー人イスラム教徒の移民女性。タイ国メーソートにあるイスラミック・コミュニティ・センターにて撮影。同センターで縫製技術の研修を受け、安全な移住と危険な移住の違いについて学ぶ。Photo: UN Women/Stephanie Simcox

 

プロジェクトは、メーソートのような危険に晒されている国境コミュニティで展開され、人身取引帰還者の支援、被害に遭う可能性の高い人らを対象に、職業技能開発を含め、様々な分野に関する研修、安全な移住と危険な移住の違いに関する意識啓発を行っています。

 

「女性に技術と知識があり、生計を立てる方法があって、もっと自信を持てれば、こうした女性はコミュニティ内のほかの女性たちをエンパワーすることが出来ます。」とUN Womenアジア太平洋地域事務所、アナ-カリン・ジャフォーズ所長臨時代行は説明します。

 

ポッティ大使は、「一致団結した女性は、彼女たち自身や家族のために状況を変えることができると信じています。今日私たちが会った女性らは真の勇気を持った人々です。彼女らは何が問題なのか、自分たちがどうなりたいかをきちんと理解しています。UN Womenとその他のドナーの力で、我々は問題を前進させることができると確信しています。」と述べました。植野氏は、「日本は引き続き,タイ国政府,ASEAN諸国、UN WomenUNODCを含めた国際機関とともに,人身取引の根絶に向け力を尽くす考えです。」との日本政府の立場を明らかにしました。

 

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在タイ国カナダ大使、ドニカ・ポッティ女史がタイ国メーソートで国境職員と面会。Photo: UN Women/Stephanie Simcox

 

同事業のもう一つの側面として、コミュニティと接する現場職員に、研修を通じて人身取引の兆候、帰還者のニーズ、帰還者支援のためのリファラル・ネットワークについての理解を深めてもらう取り組みを行っています。研修を受けた法執行官や国境職員がジェンダーをより意識し、男女で異なる、被害経験や抱える問題、ニーズに配慮できるようになることで、帰還者への対応が改善されるだけでなく、支援を受けられる帰還者が増え、検挙者数も伸びます。最終的な成果は、法執行官らが、自らが接するコミュニティのニーズに応えられること、そして、コミュニティ、特に女性が人身取引対策に関する認識を深め、自ら取り組めるよう力をつけることにあります。

 

ベンヌさんの場合、人身取引の「リクルーター」は逮捕され、27年の刑期に服役中です。しかし、人身取引斡旋業者は未だ逮捕に至っていません。ベンヌさんは、UN WomenUNODCの合同事業を通じて縫製の職業訓練を現在受けています。「将来は仕立て屋になりたい。まだ勉強中だが、今はこれからの自分の人生に希望を抱いている。」 と語ります。

 

 

* 個人名は保護のため偽名を使用しています。

 

 

UN WomenUNODC合同事業は日加両政府の支援を受け、大メコン圏5か国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)を対象に20184月から実施しています。以来、職業訓練、法的支援、人身取引にかかる意識啓発などを通じて、受益者は2千人を超えています。

 

   

詳細情報:

動画: Working at the community level to prevent human trafficking

 


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