UN Women事務局長ステートメント:「同一賃金は重要な問題です」(米国の”Equal Pay Day (平等賃金の日)”に際して)

賃金格差是正にむけたプムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長のステートメント

日付: 2016年4月12日

4月12日は、米国のEqual Pay Day(平等賃金の日)です。賃金格差は現在も至る所で根強く残っており、重大な問題です。それは明らかに不当であり、何百万もの女性とその家族を根深い貧困へと追いやっています。これは私たちが共に注意を払い行動しなくてはならない、世界的な、そして社会の構造に関わる問題なのです。

米国では、男性が1ドル得られる仕事について女性は平均79セントしか得られず、性別による賃金格差が職場における主要な懸念事項となっています。賃金格差による直接的な影響だけでなく、より長期的な女性の信用力・貯蓄・社会保障・年金などにも関わる問題です。世界的にみると、200万人以上の高齢女性が、かつては働いていたにもかかわらず、年金または遺族年金などの定期的な収入が保障されない生活を送っています。欧州連合(EU)では、高齢の女性は男性と比較して貧困に陥る確率が37%も高いことが分かっています。

賃金格差による影響を最も受けているのは低収入の女性です。米国では、白人男性が1ドル得る仕事で、アフリカ系アメリカ人の女性は60セント、先住民の女性は59セント、ラテン系の女性は55セントしか得られません。このような賃金格差によって、家庭は貧困化していきます。教育や食事、健康に費やせる収入があれば、次世代がこうした貧困から抜け出す可能性につながります。低賃金は貧困のサイクルを助長するのです。

今日の米国では、約半数の家庭で母親が一番の働き手となっているか、もしくは共働きをしていて、1520万世帯以上の家庭で女性が世帯主となっています。そうした家庭のうち3分の1は貧困レベルを下回る収入しか得られていません。賃金格差が解消されれば、米国の働く女性は平均して83週分に相当する食料を家族にもたらすことができるのです。

母親たちは正当な給料を得ることが難しい上に、例えば障害など、他の要素が加われば、状況はさらに困難になります。出産・育児による不利益(Motherhood Penalty)は低賃金労働者であればあるほど重くなるのです。米国の保育施設・介護施設で働く職員や家庭内労働者・清掃員の3分の2を女性が占めています。そうした仕事は我々の経済を機能させるには不可欠ですが、非常に低く評価されています。米国「では、ゴルフのキャディー(たいていは男性)は、平均で時給17ドルですが、介護職員(たいていは女性)は時給9ドルしか得られません。多くの女性が低賃金で過小評価された仕事につき、労働条件が柔軟でない限り、ジェンダーによる賃金格差を縮めることは不可能です。

男性が稼ぎ手であるという社会モデルはとうの昔に無くなりましたが、その影響は未だ残っています。現在の経済は男女双方の労働力を必要としていますが、職場の環境は未だに労働者が家事の責任を負っていないかのように作られています。家庭におけるケアの役割に細やかに対応し、柔軟な労働時間を提供すること、および女性の仕事を現実的に奨励することが求められています。また、家庭内でのケアの役割や責任に関しては認識が足りず、政策や実践においても過小評価されています。

全ての国で、女性は賃金を得られる仕事においては男性より少ない時間しか働いておらず、多くが無償のケア労働や家事に時間の大半を使っています。平均では、女性は男性と比較して少なくとも2.5倍は無償のケア労働や家事を行っています。裕福な女性は、より収入の少ない女性を雇って家事を代行してもらえますが、それは複雑な連鎖を生むだけです。つまり、賃金を得られる仕事に就くために、家族の世話をより低賃金の女性に任せることになるのです。連鎖の最下層にいる人々は、社会からのサポートも受けられないまま、子育てと両立するために低賃金、パートの仕事、非正規労働など条件の悪い仕事につかざるをえず、また、子どもの世話を家族や兄弟に任せて働きに出る場合、時には子供の学校中退に繋がることもあります。

ケア労働へのサポートがなければ、ジェンダーによる賃金格差は以下の2点によって助長されます。まず女性の仕事への評価が下がり低賃金労働が固定化すること。そして経済的に利用可能な育児サービスが不足することで、女性の有給の仕事の機会が制限されてしまうことです。

先月、UN Womenは、早急に同一賃金を達成するための国際的な連携組織を設立するため、主要な関係者と共同で、ジェンダーによる賃金格差を是正する活動の呼びかけを行いました。また、国連事務総長が新しく設置した女性の経済的エンパワーメントに関するハイレベル・パネルが扱う、6つのターゲットとなる課題の中に、ケアに関する経済と男女の賃金格差の削減が組み込まれました。このパネルでは、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、貿易組合、そして市民社会といった広い層から選ばれ、大きな影響力を持ったリーダーたちが含まれており、低賃金で、不利な立場に置かれ、疎外された女性たちの経済的エンパワーメントに取り組んでいます。

可能性がある解決策の一つは、ケアサービスに対する政府支出です。最近のITUCと英国のThe Women’s Budget Group(女性の予算に関するグループ)の研究では、全ての人が利用できる無料の保育システムが整備され、かつそこで働く保育者が正当な賃金を得られた場合、それは165万もの仕事を創出し、ジェンダーによる賃金格差は3.4%縮小するという調査結果がでました。子供たちは人生において最高のスタートをきることができ、女性は労働市場に残ってキャリアを築けるのです。そして、その投資は、増加した税収と減少した社会保障費によって賄うことができるのです。

つい先週、ニューヨークとカリフォルニア州知事はそれぞれ最低賃金を時給15ドルに引き上げる法案に署名しました。それは賃金格差に苦しむ低収入の女性たちにとり有益なものです。米国は、政府レベルで有給の育児休暇を提供していない唯一のOECD加盟国ですが、この重要な問題に関しても改善がみられます。ニューヨーク州では、2021年までに、民間企業で働く人々に対して、給与が部分的に支払われる12週間の出産・育児休暇を認めると宣言しました。また、サンフランシスコは企業に対して給与が完全に支払われる育児休暇を2017年から義務づける、米国で初めての都市になろうとしています。

この問題に対する単純な解決策はなく、また女性の経済的エンパワーメントはジェンダー平等実現の一つの側面にすぎません。しかし、ジェンダーによる賃金格差の是正と女性・女児の無償のケア労働を減らしていくには、早急に効果的な解決策を見つけ、実施する必要があります。