「女性に対する暴力の撤廃~世界の状況とUN Womenの取り組み~」:福嶌香代子UN Women日本事務所長が、お茶の水女子大学で講演

日付: 2017年1月30日

Photo:お茶の水女子大学

福嶌香代子UN Women日本事務所長は1月16日(月)、お茶の水女子大学において、「女性に対する暴力の撤廃~世界の状況とUN Womenの取り組み~」と題し講演を行いました。 本講演は、お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所の主催のもと、女性に対する暴力の世界的な状況とUN Womenの取り組みに関して考察を深めるべく、開催されました。

福嶌所長は、UN WomenおよびUN Women日本事務所の活動紹介の後、女性に対する暴力は家庭内暴力や親密なパートナーによる暴力、職場等におけるセクシャルハラスメント、紛争時の性的暴力、女性器切除、人身売買など様々な形態をとることを説明しました。そして暴力撤廃のためには、未然の防止、再発予防、法律・政策・被害者へのサポートの整備、そしてジェンダー平等の教育や意識改革のすべてを、長期的かつ永続的な効果を見据えながら、様々なセクターと協力して実施する必要性を訴えました。

また、具体的なデータを用いて、女性に対する暴力の国際的な状況を説明しました。現在、世界の女性の3人に1人は身体的および性的暴力の被害者であることや、児童婚をした7000万人以上の女児のうち3人に1人は15歳未満で結婚し、低年齢での妊娠やHIVなどの性感染症のリスクにさらされていること、推計約2億人の女性や女児が女性器切除を受けていることを指摘しました。このことから、女子差別撤廃条約や北京宣言および行動綱領のような国際規範と持続可能な開発目標(SDGs)目標5にもあるように、女性に対する暴力の撤廃は国際的な課題であると強調しました。

UN Womenの具体的なプロジェクトとして、カメルーンの例を挙げて説明しました。カメルーンでは、貧困や政情が不安定な周辺国からの難民受け入れや、ボコ・ハラムの台頭の影響でナイジェリア難民流入に加え、国内避難民が増加しています。これらの危機的状況に伴い、ジェンダーに基づく暴力も深刻となっています。UN Womenは2015年4月から、日本政府の拠出協力により、ジェンダーに対する暴力を受けたサバイバーのためのコールセンター設立を支援しました。カウンセリング、医療ケアへの紹介、司法措置と法的支援の拡大を求める活動も行いました。警察官を対象に人道危機において女性や子供を保護するための研修を実施したり、難民キャンプにおける女性および女児のための結束スペース、警察におけるジェンダーデスクの設置なども支援しました。

Photo:お茶の水女子大学

また、UN Womenが運営する、女性に対する暴力撤廃国連信託基金についても説明がありました。同基金は、女性に対する暴力撤廃に特化して取り組む唯一のグローバルな助成金制度であり、 1996年の創設以来、136の国と地域で、426のイニシアチブに対し、1億1600万米ドルの支援を実施してきました。NGOや、政府、そして国連のカントリー・チームと連携して、少年と男性、伝統的および宗教的なリーダーへ戦略的にアプローチして暴力を防止したり、法的支援や心理社会的カウンセリング、ヘルスケアなどのサービスへのアクセスを拡大したり、 女性に対する暴力に関する法律、政策そして行動計画の実施を強化しています。

更に福嶌所長は、UN Womenのフラッグシップ・イニシアティブ・プログラム「安全なまちと安全な公共スペース:セーフシティ・セーフパブリックスペース」を紹介しました。2010年11月に開始されたこのプログラムは、公共の空間における性的暴力を防止し、それに対応することを目指します。例えば、エクアドルのキトでは、公共のスペースにおけるセクシャルハラスメント対策を強化するために地方条例を改正したり、エジプトの住宅都市開発省は、都市計画のジェンダーアプローチを徹底するために女性による安全監視を採用しました。

参加者の皆様の感想からは、講演のテーマへの関心の高さがうかがえました。また、ジェンダー平等の達成は自分自身や周りの人々の意識改革なしには始まらない、と意識を高く持っている声も目立ちました。

参加者の皆様の感想(一部):

Photo:お茶の水女子大学

・男女の不平等や女性の暴力が存在することは知っていたが具体的な数字を知ることで、もっと身近な問題に感じた。

・家庭内にしても、労働の場にしても、自分が受けている暴力は、個人的なものだと思いがちであるだろうが、そうではなく、それは社会・構造・世界の問題なのだと認識することが重要だと考える。

・「差別の意識が暴力を生み出す」という言葉が印象的でした。政策や金銭的な支援といった上からの変革だけでなく、教育をはじめとする中からの改革により、一般の人たちのジェンダーに対する感覚を変えていくことも併せて大切だと思いました。

・UN Womenの活動領域の中に「国家の開発計画と予算のジェンダー平等の反映」とあって、これまでジェンダー問題では草の根的なところしか見られていなかったのではっとしました。

・女子大なのでなかなか男子学生の意見を聞く機会もないですし、友達に話すと引かれるのではと思ってしまいます。また、女性の中にも、男性優位でつくられたジェンダー意識が刷り込まれている面もあります。若い世代の啓発が重要というのは本当にその通りだと思うので、男子学生が意見交換できる機会がもっとあると良いかもしれません。ジェンダーは"男対女"ではなく、全ての人が自分らしく生きるために考えるべきテーマだという認識が広まると良いなと思います。

・女性器切除の現実があることに非常に衝撃を受けました。社会的な慣習によって行われていると思うのですが、この事実があきらかに人権侵害であるにしても、外部の人が地域の慣習・伝統をどう変えていくのか、難しさがあると思います。 

・「ジェンダー平等」の最終形態をイメージするのが難しいなと思いました。あまりにも普段からジェンダーにさらされているからかもしれないです。結局現在の男性のような立場に女性がなりかわるだけなら意味が無くて、「男」とか「女」で括られて個人が評価されることのない世界や、自らの社会的な人格を自由に選んで受け容れてもらえる社会を目指していかなければならないと思いました。

同大学グローバルリーダーシップ研究所の小林誠先生からも、「『女性に対する暴力』と聞くと身近な問題ではないと感じる学生が多いのですが、日本でもさまざまな暴力がありますし、遠くの暴力が私たちの生活と結びついていることもあるので、関心を高く持つことが重要だと思います」とコメントがありました。

同大学附属図書館のLiSA (Library Student Assistant)メンバーの皆様も、オレンジキャンペーン「お茶大図書館から世界をオレンジ色に」として図書館で特別企画展示を開催することで、女性に対する暴力撤廃の16日間キャンペーンに参加して下さいました。

UN Women日本事務所は引き続き、教育機関との連携を行ってまいります。

Photo:お茶の水女子大学