国際女性デー

UN Women親善大使アン・ハサウェイ:2017年国際女性デー基調演説「有給育児休業は、自らの役割と時間の使い方を決定する自由をもたらします」

3月8日ニューヨークで行われた国際女性デーの記念式典において、UN Women親善大使アン・ハサウェイが基調演説を行いました。

日付: 2017年3月8日

国連総会議長、国連副事務総長、UN Women事務局長、

皆様、私は幼い頃に、女優としてのキャリアをスタートしました。マンハッタンでのオーディションに母が車で送迎できない時は、ニュージャージー郊外から電車に乗り、父を訪ねました。父は勤め先の法律事務所から、ペンシルベニア駅ホームの発車標のところまで来てくれました。一緒に地下鉄で移動し、到着して地上に出ると、父はいつも私に「北はどっちかな?」と聞きました。最初私は北の方角を見つけるのが得意ではありませんでした。ですが何度もオーディションを受け、その度に父に「北はどっちかな?」と尋ねられたので、徐々に北を見つけるのが上手になりました。

昨日ここへ来る飛行機の中で、突然このことを思い出しました。あの頃からどれほど遠くへ来たかというだけでなく、あの小さなレッスンがどれほど意味のあることだったかに気が付きました。幼い頃から父に鍛えられたので、大人になった今、私は自分の進む方向を選ぶ能力を信じることができます。父は、私が世の中で自分自身を導いていく自信を与えてくれたのです。

2016年3月下旬、私は初めて親になりました。これは世界共通のことだと思いますが、生後1週間の息子を抱えて、自分の優先順位が細胞レベルで変化したような、言葉では言い表せない体験をしました。キャリアへの愛は持ち続けながらも、別のものや人をもっとずっと大切に思うような意識の変化です。多くの親と同じように、どうしたら仕事と、親という新しい役割のバランスを取っていけるか悩んだ時、アメリカ合衆国の出産や育児に関する休業政策についての統計を思い出しました。

現在アメリカ合衆国の女性には、12週間の無給の休業が認められており、男性には、何も認められていません。私にとってこの情報は、出産後、これまでとは違って聞こえたのです。それは、息子が生後1週間で私がほとんど歩けず、夫と私にすべて頼り切っている息子を理解しつつあった時、私自身ほとんどのことを夫に頼っていた時、私たちが家族や夫婦の関係について知っていると思っていたこと全てを学び直していたその時、これまでと異なる意味を持ちました。

どうやら私たち全てのアメリカ合衆国の親は、3か月以内に「平常に戻る」ことが期待されています。収入無しで、です。私は、「アメリカ合衆国のほとんどの人が給料ぎりぎりの暮らしをしている中で、実際に妊娠によって自分の家で養うべき人がもう1人増えるのならば、12週間の無給の休業は経済的にどう機能するのだろう?」と疑問を持ちました。

実のところ、多くの人にとって機能していません。4人に1人のアメリカ合衆国の女性が、出産の2週間後には職場に復帰します。それ以上長い休みを取る経済的余裕がないからです。25%のアメリカ人女性です。同様に気になるのは、丸々12週間休めるような経済的余裕のある女性でも、多くが休業しないことです。休業取得は「母親のペナルティ(出産・育児による不利益)」、すなわち仕事熱心でないと見なされて昇進などキャリアアップの機会を見送られることを意味するからです。私の家庭では、母はキャリアか3人の子の育児のどちらかを選ばなければなりませんでした。後者は無給で、専業主婦という、価値が正当に評価されない選択肢でしたが、両方を選べるような支援はなかったのです。父と都会に行った思い出は、特に意味があるものです。父は唯一の稼ぎ手だったので、兄弟や私が父と過ごせる時間は、父の仕事量によって常に限られていたからです。それでも私たちは、たいへんに恵まれた家庭でした。私たちの苦労は、他の家庭にとっては夢見るようなものでした。

有給育児休業の課題を深く考えれば考えるほど、女性の完全な平等とエンパワーメントに対する根強い障壁と、男性の家庭内におけるケア労働者としての役割の再定義、場合によってはそれを恥ずかしいと考える風潮を覆すことの必要性との関係性が、はっきりと見えてきました。言い換えれば、女性を社会的に自由にするためには、男性も自由にしなければいけないのです。

女性と女児が家と家族の世話をすべきという思いこみと一般的な慣習は、女性を差別するだけでなく、男性の家庭や社会への参加やつながりを制限する、根強く現実に存在する固定観念です。そのような制限は、彼・彼女ら、そして子どもに広く重大な影響を及ぼします。私たちはそれを分かっているはずです。それなのになぜ、私たちは父親を過小評価し母親に過度な負担をかけ続けるのでしょうか。

有給育児休業とは、単に仕事を休むことではありません。自らの役割と時間の使い方を決定する自由が与えられ、新しいポジティブな行動サイクルを作り出します。従業員に有給育児休業を付与した企業からは、離職率の低減や、常習的な欠勤の減少、トレーニング費用の削減、生産性とモラルの向上が報告されています。私たちには有給育児休業を認める経済的余裕がないのではありません。むしろ、そうしないわけにはいかないのです。

実際、スウェーデンにおける研究によると、父親が育児休業を取った月は、母親の収入が6.7%上昇しました。家族全体に6.7%の経済的自由がもたらされたということです。「男性とジェンダー平等に関する国際調査」によると、父親の多くは、勤務時間を減らすことで子どもとより多くの時間を持てるのであればそうしたい、と答えています。今日ここにいる私たちのどれだけが、充分に父親と過ごして育ってきたでしょうか。この場にいる父親の皆さんの何人が、充分に子どもと過ごしていますか。

私たちが成長していこうとするのなら、互いに助け合わなくてはなりません。

私はUN Womenと共に、世界中で国、企業、公共機関に有給育児休業の支援者(チャンピオン)となるよう行動を呼びかけます。2013年時点で、有給育児休業の規定は190の国連加盟国のうち66か国でしか設けられていませんでした。国連自体も平等は達成できていないので、私はまず、国連が良い手本となることを期待しています。国連は、今まさに有給育児休業規定の再検討中です。親になりたいという理由で男女ともに経済的に不当な扱いを受けることのない世界の実現に向けて、まずは模範を示しましょう。

この課題について考え、そこから恩恵を受けるために、子どもをもつ必要があると言っているのではありません。子どもがいてもいなくても、欲しくても欲しくなくても、ジェンダーに基づく差別のない政策が実現した社会に生きることは、皆にとって利益になるのです。そして、思いやりのある時代に生きることは、私たちを弱くするのではなく、私たちを、より人間らしくするのです。

母親のみを対象とした休業や、性別に基づく職場規定は、この時代においては、特権的だが自由のないものでしかありません。これらの制度は女性の生活を楽にするために作られたものですが、それによって女性が職場にとって不都合な存在であるという意識を生み出しました。男性を、感情的に抑制される生き方に鎖でつないでいます。そして、これらは色々な形態の家庭がある現実の世界では機能しません。なぜなら現代には、2人の父親を持つ家族もあるからです。そのような家族に、母親専用の休業がどのように機能するのでしょうか?

今日、国際女性デーに際して、現行の政策を策定した先駆者たちに感謝を表明したいと思います。彼・彼女らを称えるとともに、私たちは言葉、そして意識をジェンダーから可能性に向けることで、彼・彼女らがスタートした場所からさらに積み重ねていきましょう。そして、親たちが払った犠牲に対して敬意を示しましょう。私たち皆の人生、特に子どもの人生を決めるであろう、より公平な真実への道筋を作りましょう。有給育児休業は、単に親たちに子どもと過ごす時間をより多く与えるだけではありません。それは子どもが目にする物語を変え、将来の可能性を変えるでしょう。

私には希望があります。私の国、アメリカ合衆国は、高所得国でありながら、有給育児休業はもちろん有給産前・産後休業もない唯一の国ですが、ニューヨーク州、カリフォルニア州、ニュージャージー州、ロードアイランド州、ワシントン州などの州において、有給育児休業制度を実施するという素晴らしい取り組みが施行されています。シャーリーン・マックレイ市長夫人とビル・デ・ブラシオニューヨーク市長は、ニューヨーク市の2万人以上の公務員に対して有給育児休業を付与しました。私たちにも実現できます。

変化をもたらすということは、単にそれを最も必要としている人々に責任を押し付けることではありません。私たちが平等を達成したいのであれば、権力のトップからのサポートが不可欠です。だからこそ、グローバル企業ダノンのような、有給育児休業の先駆者を紹介しお祝いを述べることができるのは大変すばらしいことです。本日、ダノン グローバルCEOエマニュエル・ファベール氏が、「HeForShe」の最初の有給育児休業テーマのチャンピオンに選ばれたことを、みなさんにお伝えします。この発表の一環として、ダノンは、自社の従業員10万人に対して、全世界でジェンダーを限定しない18週間の有給育児休業制度を、2020年までに実施します。親善大使のエマ・ワトソンが「HeForShe」の象徴ともいえるスピーチで、権力の座の大半を男性が占めている世界では、男性にこそ変化の必要性を理解してもらう必要がある、と述べました。、ファベールさん、これはあなたのようにビジョンを明確に持った人のことだと思います。ありがとうございます。

想像してみてください。次の世代、ダノンのような施策が新しいスタンダードとなった時、世界は一体どうなっているでしょう。10万人が、1億人となったならば。10億人なら。さらに多ければ。あらゆる世代の人々が、「北」を見つけなければなりません。

世界中で女性が選挙権を求めた時、私たちは平等に向けて基本となる一歩を踏み出しました。

「北」

同性婚を認める法律がアメリカ合衆国で通過した時、私たちは差別的な法律を終らせました。

「北」

何百万人もの男性と男児が、エマ・ワトソンの「HeForShe」の呼びかけに応えた時、世界は成長しました。

「北」

私たちは自分自身に、明日は今日よりもどうなりたいか?と問いかけなければなりません。

私やあなたのような皆が態度を明確にする時、世界は成長します。なぜなら私たちは、女性と男性がいかに異なるかといった概念を超えて、より深い真実が存在すると知っているからです。愛は愛、親は親であるという真実です。

ありがとうございました。