女性の司法アクセス

課題

 司法過程におけるジェンダーに基づく差別を撤廃することは、女性の経済的資産や身体的統合、声、そして行為主体性を保護するために不可欠です。 

しかし、司法アクセスにおけるジェンダー不平等は世界中で起きており、特に多元的司法制度において顕著に見られます。女子差別撤廃条約の締約国のうち、30ヶ国以上が、婚姻と家族関係における平等について規定した第16条へ留保を付しました。女性の婚姻最低年齢が男性のものより低い国は50ヶ国あり、外国籍の人と結婚した女性が、配偶者あるいは子供に国籍を引き継ぐ権利を制限する国は60ヶ国もあります。 

世界的に見て、フォーマルな司法制度の処理能力には限界があります。例えば、インドのニューデリー高等裁判所が抱える未処理訴訟の問題は深刻で、全てを処理するには466年かかると言われています(The Diplomat, 25 December 2013)。ガーナ共和国で最も貧しいアッパー・イースト州における、判事および下級判事の人数に対する人口の比率は、1人に対して17万1,913人であるのに対し、首都アクラでは1人に対して3万3,416人と、差が生じています(Ghana Judicial Service, 2012)。 

従って、世界の最も貧しい女性たちの大多数は、迅速な紛争解決が期待できる一方で、ジェンダー平等の原則への信用性や参照頻度がより少ない傾向にある、インフォーマルな慣習的および宗教的紛争解決制度に頼っているのです。 

われわれの解決策 

女性の司法アクセスに関するフラッグシップ・プログラムは、3つの戦略を通じて、司法過程における偏見とジェンダーに基づく差別の撤廃に取り組みます。
  • 第一に、法律、政策、財政政策において、ジェンダーに配慮することを可能にする環境を整備することから、持続的な司法改革を実現します。現行法の見直しは新しい法案を成立させるだけでなく、現行法の実施のにおける障壁を継続的に分析することを可能にします。女性の司法アクセスに対する構造的障害について国ベースの状況分析を行うことで、政策の設計と実施に役立てることができます。ジェンダーに配慮した統計は、予算編成とモニタリングの統一的な実施を促進します。関係するステークホルダーの参加は、司法セクターの計画、設計、実施、モニタリングそして予算編成の全段階において重要です
  • 第二に、フォーマルおよびインフォーマル司法実務者の、組織的および文化的な偏見を撤廃し、説明責任を強化する能力を強化します。このプログラムは2方向のアプローチを活用して、下記2つを実施します:(1)司法制度全体へのインパクトを確保するため、各国司法機関の研修カリキュラムのジェンダー主流化を図る技術協力;(2)貧しい女性の戦略的ニーズに応えるための司法機関向け研修プログラムを実施するための、市民政府組織などのパートナーへの支援。暴力に関する案件や、小規模な商事クレーム、婚姻、離婚、親権および子どもの扶養に関する争い、そして相続などの個人身分に関する案件を扱うコミュニティーの警察署や、フォーマルおよびインフォーマルな裁判所などの、最も貧しい女性たちが助けを求めやすい機関へ重点を置きます。簡素なデータ収集技術を伴ったキャパシティー・ビルディングは、これらの機関が訴訟の処理率、有罪判決率、そして減少率を定期的にモニターすることを可能にします。 

  • 第三に、女性にとっての司法の需要と司法行政における女性の可視性を増やします。このプログラムは、HeForSheキャンペーンやその他の政策提言ツール、川下への介入を通じて、女性にとっての司法の需要を増やすため、伝統的および宗教的なリーダー、コミュニティに根ざした司法を補完するサービス機関と連携します。 

    プログラムの仕組み

    女性の司法アクセスに関するフラッグシップ・イニシアチブは、各国の開発における特有の条件を満たすため、カントリー・プログラム一式と一つのグローバル・プログラムを組み合わせて、20カ国で実施されます。 

    カントリー・プログラムは、UN Women のカントリーオフィスが社会的変革理論とプログラムの枠組みを利用して、地域レベルで資金を調達することを可能にします。オぺレーショナル・ツールキットは、国レベルにおいてプログラムの理解と実施をより容易にします。 

    更にUN Womenは、カナダの司法教育協会とのパートナーシップのもと、女性の司法アクセスに関するグローバル・プログラム・ファンディング・プロポーザルを作成しました。このプロポーザルは、持続可能な開発目標(SDG)の目標5の実施を3段階で行うことに貢献します: 

    法改正:婚姻最低年齢、離婚、相続、親権および子どもの監督保護、ジェンダーに基づく差別的な国籍法、そして女性に対する暴力に関する法律の改正に重点を置きながら、女性の司法アクセスを保障するために、法律、政策、および実施の変革を支援するために政府および市民社会組織と連携します。 

    司法制度改革:効果的な指針および手続きを実施し、女性の司法アクセスを向上させるため、フォーマルおよびインフォーマルな司法機関と協働します。 

    コミュニティー教育とエンゲージメント:女性のエンパワーメントを促進し、彼女たちが自身の権利と司法サービスへのアクセスの仕方について意識と理解を高めるために、コミュニティーレベルで機能し、伝統的な慣習がこれらの目標をいかに支えることができるか、コミュニティーと共に考えます。 

    変革のためのパートナーシップ 

    このプログラムは、国レベルにおいて、UNカントリーチームと共に「ひとつの国連」という枠組みの中で実施されます。

    国連システムと司法教育協会に加え、欧州評議会やコモンウェルスの判事および下級判事、国際法律化委員会、国際女性警察官および裁判官協会、女性法律家協会などその他のパートナーとも連携します。

    数字で見る女性の司法アクセス

    • 189の国々が、女性と女児の人権を保障することを誓約し、女子差別撤廃条約に批准しました。
    • ジェンダー平等は139ヶ国の憲法で保障されています。125ヶ国が家庭内暴力を違法としており、32ヶ国が女性器切除を違法としています。少なくとも117ヶ国は同一賃金を法律で保障しており、173ヶ国は有給の育児休業を保障し、117ヶ国は職場でのセクハラを禁じています。 

    • 115ヶ国が女性の財産権の平等を保障しており、93ヶ国が相続権の平等を保障しています。