もう自分でも自分が誰かわからないくらい

日付: 2021年9月7日

 

日本政府ご支援のもと、新型コロナウイルスの感染拡大の中、バングラデシュのタランゴ女性シェルターは、女性や女の子が暴力被害から抜け出し、自立への道を歩む支援をする統合支援サービスを提供しています

タランゴ女性シェルターの女性・女児の統合支援サービス。写真提供:UN Women/Fahad Kaizer

 

新型コロナウイルスの感染拡大により世界中で恐怖や不安、失業や貧困増大しましたこうした要因は、女性・女の子たち暴力被害の深刻化を引き起こし、特に、家庭内暴力、レイプ、児童婚の増加が世界中で報告されています。バングラデシュも例外ではありません女性労働力の9割が属しているとされる非公式(インフォーマル)の多くの職は一瞬にして消え、女性たち大きな打撃を与えました経済不安により、大多数の男性は家族を捨て、残された女性や子どもは住む家を無くし、暴力の危険にさらされました

 

暴力に苦しむ女性が増える一方で、被害者への支援サービスの多くは中断されました。バングラデシュの首都ダッカにある非営利団体、タランゴのプログラムコーディネーターである、ニパ・ナーズリーさんは言います。「コロナ禍で、たくさんのシェルターや支援サービスは停止せざるを得なかったのです。幸いなことに、タランゴは同じ運命を歩むことはありませんでした

 

コロナウイルスのパンデミックの最中、日本政府の資金提供を受け、タランゴはUN Womenとのパートナーシップを通し、暴力被害女性への不可欠な支援サービスと経済エンパワメントのための支援サービスを組み合わせた、新しいシェルターモデルを展開しました

 

タランゴ女性シェルターで、女性や女の子たちは、一時的な宿泊施設の利用、医療および法的支援、心理社会的カウンセリングなど暴力被害者を対象とした支援サービスのほか、資金運営や職業訓練通して自立へ向けた支援サービスを受けることができます

 

UN Womenとパートナーシップを組んでから、タランゴが提供する支援の規模は大幅に広がりました。今ではどんな女性に対しても、全面的な支援サービスを提供できるようになったのです」と、ニパさんは言います

 

For many survivors, meeting other women thriving for a better future itself is an empowering opportunity. Photo: UN Women/Fahad Kaizer

多くの暴力被害者にとって、より良い人生を歩もうと奮闘する他の女性と出会うことは、それだけでも力となります。写真提供:UN Women/Fahad Kaizer

 

 

安全とサービス

 

現在タランゴ女性シェルターに住んでいる60人の女性のうちの1人が、カトゥーン・サイマさんです(彼女の手紙はこちら私は子どもの頃からずっと怯えながら暮らしていたお父さんが、まだ結婚できる歳になっていなかった私を結婚させたとき。私の夫となった人が、結婚持参金(*1)が足りないと言って私を痛めつけたとき。そんなときも、村の人たちは誰も私を助けてくれなかった。私の命を救ってくれたのはタランゴだった

 

カトゥーンさんは、医療支援とカウンセリングを受けたのち護身術のクラスを始め今は資金運営と仕立てのスキルを磨いています。「ここのシェルターから出たら、私は部屋を借りるつもり。働いて貯金して、自分が安心できる場所を作るの。私は自分の身を守って、仕事を見つけることができるって自信がある」、そう言ってカトゥーンさんは笑顔を見せます。「私の人生は本当に変わった。もう自分でも自分が誰かわからないくらい。」

 

タランゴはカトゥーンさんのような暴力被害女性への支援のほか、暴力にさらされるリスクのある女性女の子たち、そしてシングルマザー、障害のある女性、LBTIQの人々や移民など、社会的に弱い立場にいる女性や女児も支援の対象としています。「私たちの仕事は、彼女たちを安心させ、力を与えること。そして最大限の敬意を払い、共感する心をもって、彼女たち支えることです」、とニパさんは話します

 

At the Tarango women’s shelter, Nazlee Nipa (right) makes sure women and girls feel supported and empowered in a comfortable and safe environment. Photo: UN Women/Fahad Kaizer

ニパ・ナーズリーさん(写真右)は、女性や女の子たちが安全で心地よい環境の中、サポートを受けエンパワーされる手助けをしています。写真提供: UN Women/Fahad Kaizer

 

 

アクター・ビシさんは運動機能障害を持って生ままし。コロナ禍でアクターさんの家族は職を失い、極度の貧困の中暮らしていまし。「初めてシェルターに着いたとき、私の障害にもかかわらず、大歓迎を受けたの。小さな頃か、他の人ができるこでもあなたにはできない、と周りの人から言われ続けてきた。シェルターでは、あなたも他の人と同じように仕事ができる、とスタッフに言われたの。あなたはできる、と私を信じてくれたこと。それがあのとき必要だった力を私に与えてくれた」と、アクターさんはします

 

シェルターで、アクターさんは仕立ての職業訓練を受講しまし。「今までちゃんとした訓練を受けることは金銭的に難しかったけど、服を作ることはずっと私が夢中になれることだった。この職業訓練を受けたことで、新しい世界への扉が開いた。収入を得て自立の道を歩む新しい世界へ。これで私の人生は変わる」

 

シェルターでは、アクターさんのように所得機会を得た女性が200人ます職業訓練と資金運営のトレーニングを終了したのち彼女たち一人一人に就職口の紹介2ヶ月の助成金が支給されますこうして女性の経済的回復力をしています

 

Bithi Akter knows her disability does not mean the inability to become independent. Photo: UN Women/Fahad Kaizer

アクター・ビシさんは、障害は自立の妨げにならないことを知っています。写真提供:UN Women/Fahad Kaizer

 

 

ガールズクラブによる、地域コミュニティアウトリーチ

 

タランゴの協力のもと、ガールズクラブのメンバーはダッカ市内の地域コミュニティに出向き、女性や女の子たちに影響を与える課題について対話を通し、住民の知識や関心を高めるアウトリーチ活動をしています。メンバー女性や女の子たちに対する暴力、被害にあった時に受けることができる支援サービスの情報、月経衛生、新型コロナウイルス感染症の予防や安全ガイドラインなどの課題について、地域住民と意見交換を行なっています

 

また、ガールズクラブのメンバーは、地域コミュニティの中での女性に対する暴力の兆しをとらえ、疑念を抱いた場合は直ちにタランゴに知らせる、地域の監視役としての役割も果たします最近ではレイ被害に気づいたメンバーが、すぐに被害女性を、緊急医療や警察相談などの支援を提供しているクライシスセンターに紹介しました。

 

「私たちにできることはたくさんあるのガールズクラブのメンバー15人のうちの1人である、アクター・ミタさんはいます「いままで、地域の人たちは若者、特に私たちみたいな若い女の子が、女性に対する暴力のような深刻な問題に関わったり、意見を伝えたりするなんてできないと思っていた。でも今は違う。私たち若者こうした問題に貢献することの価値を感じ始めてる。若い女の子たちは暴力の被害に遭いやすいし、だから話し合いの中で私たちの声を届けなければならないの。経験によって積み重られたある知恵の上に、私たちはエネルギーと情熱を添えるんだ」

 

As a Girl Club advocate, Mita Akhter (right) goes to communities and holds discussions with community members in Dhaka, Bangladesh. Photo: UN Women/Fahad Kaizer

ガールズクラブのメンバー、アクター・ミタさん(写真右)は地域コミュニティに出向き、住民と意見交換を行います。ダッカにて。写真提供:UN Women/Fahad Kaizer

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*身元を保護するため、名前は変更されています

1訳注:バングラデシュでは婚姻にあたって女性の家から男性の家に財産を送る習慣があり、価値の低い財産しか用立てることのできなかった女性の婚家での立場が弱くなり、男性側はそれをもって女性に対する虐待を正当化することがあります

 

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暴力を経験している女性や女の子たちに、包括的で質の高いサービスを提供するためのガイドラインであるエッセンシャル・サービスパッケージを取り入れたタランゴの女性シェルター成功と学びに基づき、 UN Women(国連女性機関)女性に対する暴力の支援サービスと経済エンパワメントの支援サービスを統合した女性シェルターモデルのツールキットを作成し、バングラデシュ全国のシェルターで展開していきますこれは、UN Womenが取り組んでいる、女性と女の子たちに対する暴力における必要不可欠な支援サービスの一環で