「もうずいぶん前に夢を見ることをやめたな、ってふと気づいたの」

何年ものあいだ暴力と経済難に苦しんだハサン・シャミンさん(仮名)は、タランゴの女性シェルターで、新しい人生を切り開くための手段を手にしました。

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  Illustration: Miho Watanabe

 

息子へ

 

お母さん小さいころあなたみたいに夢があったお母さんの夢は、学校に通って、教養のある女性になることだった。だけど、あまりに幼い恋に落ち、早すぎる恋愛に夢中になってしまった大きく道を誤ったと気がついた時にはもう遅かった。結婚とは学校を辞めることを意味し、私が恋した相手はたくさんの問題を抱えていた。

 

あなたのお父さんは、仕事を見つけるのがあまり上手じゃなかった。たまに仕事を見つけると、そこで一日働き、そのあと三日家にこもる生活をしていた。お母さんは一日に一食のごはんを作る日もあれば、それすら作るための食材がない日もあった。そしてお父さんは、お母さんにひどいことばかりするようになった。あざを服で隠し、お母さんはお腹も心も空っぽだったそして、もうずいぶん前に夢を見ることをめたな、ってふと気づいたの

 

ほとんどの女性は、夫との問題に苦労しても、それでも夫と共にいるお母さんもそうだった。だって、お父さんがいなければ、お母さんには仕事もお金も住む家もなかったから。

 

そんなある日、近所に住む人から、お母さんのような女性を支援している人たちがいることを聞いたの。その人たちがいるタランゴに行って、お母さんは歓迎され、タランゴの女性シェルターを案内してもらった。そこにはお母さんと同じような問題を抱えている女性たちがたくさんいた。その女性たちはみんな、仕事を得て収入を得て自立するために、新しいスキルを学ぶのに忙しそうだった。そしてお母さんもその輪に入らせてもらったの。

 

お母さんはそこで洋服の仕立てを学んだそうしたらお父さんが仕事を見つけるのに苦労していても、お母さんがプロの仕立て屋として収入を得られるでしょう。学ぶということは、それが学校の中でも外でも、私たちの人生の扉を開けてくれるものなのよ。お母さんはここで、仕立てのスキルだけではなく、自分にとって大事なことについての決定を下すこと、そして自分の人生を自分で切り開いていくことも学んだお母さんは、タランゴでまた自分の夢を見つけたの

 

そして自分を守るために空手の訓練も始めた突きや蹴りのたびにずっと長い間閉じこもっていた沈黙の壁を、自分で壊している気がしたカウセリングのセッションでもたくさん学んだ。どうストレスと向かい合うか。嫌なことを嫌だとどう主張するのか。その相手がお父さんだとしても。お母さんはもうお父さんの振る舞いに立ち向かう準備ができた。それから、お父さんがお母さんにひどく嫌なことをした日があったの。お母さんは3ヶ月の間学んできた空手の術を見せてやった。お父さんは驚いたみたい。でもお母さんが変わってきただと気がついたでしょうね。その日から、お父さんもだんだんと変わってきたわ。

 

タランゴの女性シェルターで、お母さんはまた夢を見つけたと言ったでしょう。お母さんの一番の夢は、あなたをできるだけ長い学校に通わせることなの。今のお母さんだったら、その夢を叶えられる。だって、学ぶことをやめずあなたの教育費を払うことができるよう、新しいスキルを身に付けたんだもの。お母さんはこれから、もうどんな夢も叶えることができるのよ。

 

愛を込めて。

母より

 

 

記事の本文(英語)はちら

 

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新型コロナウイルスのパンデミックの最中日本政府の資金提供を受け、タランゴUN Women(国連女性機関)とのパートナーシップを通し暴力被害女性への必要不可欠な支援サービスと経済エンパワーメントのための支援サービスを組み合わせた、新しいシェルターモデルを展開しました

 

暴力を経験している女性や女の子たちに、包括的で質の高いサービスを提供するためのガイドラインであるエッセンシャル・サービスパッケージを取り入れたタランゴの女性シェルターの成功と学びに基づき、UN Womenは統合シェルターモデルのツールキットを作成し、バングラデシュ全国のシェルターで展開していきます 。これは、UN Womenが取り組んでいる、女性と女の子たちに対する暴力における必要不可欠な支援サービスの一環です