女性が運営するコミュニティーキッチンがネパールの弱い立場にある女性たちを助けています

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ネパールではCOVID-19ロックダウンのせいで41%の女性が仕事を失っています。UN Womenは失業した女性のニーズに答えるため、フィンランド政府のサポートを得て、女性運営のコミュニティーキッチンを立ち上げ、このような女性たちが食料や栄養に確実にアクセスできるように活動しています。プシュパ・スナールさんはコミュニティーキッチンに雇われている123人の従業員のひとりです。キッチンはそこに働く女性達に収入をもたらし、コミュニティーの他の女性達が担うケアの重荷を軽減し、コミュニティーの中に信頼と結束を築いています。

2021年8月19日

プシュパ・スナールさん(青の洋服の女性)と彼女のチームは、UN Womenパートナーのマイティ・ネパールの運営するコミュニティーキッチンで食料を配布しています。 写真:マイティ・ネパール提供

「食べ物がなくて何も食べてない時に、満腹の時に飲む薬を出されても困ります。胃の中に何もないときに飲める薬を処方していただけませんか」

このようなお願いは、ネパールの農村で医者がよく耳にするもので、国連機関・ネパール政府・市民社会などの多様なステークホルダーが立ち上げ、UN Womenが議長を務めるネットワークの参加団体、人道支援アクションタスクチーム(GiHA TT)も同じことを言っています。GiHA TTは、ネパールのCOVID-19パンデミック対応に、ジェンダー平等や「誰も取り残さない」視点を取り入れることを働きかけています。

帰国移民、農民、障がいを持った女性、日雇い労働者、病気の女性、妊婦、授乳中の母親などを含む、疎外されて弱い立場にいる女性たちが、パンデミックによって一番ひどい影響を受けています。ネパールではロックダウン中に女性の41%が仕事を失っています。UN Womenは失業した女性のニーズに答えるため、フィンランド政府のサポートを得て、ネパール中の女性運営のコミュニティーキッチンによって彼女たちが食料や栄養に確実にアクセスできるよう活動しています。7つある管区の4つで10のコミュニティーキッチンが立ち上がっています。コミュニティーキッチンはUN Womenの包括的救済パーッケージの一部をなすもので、弱い立場にある女性達に食料品などを提供し、ジェンダーに根差す暴力や無償労働根絶、情報へのアクセス改善に取り組み、COVID-19下で横行する有害な行為や差別的なジェンダー規範と闘っています。

ネパールガニ市出身のプシュパ・スナールさん(30歳)は、UN Womenのパートナーであるマイティ・ネパールがコミュニティーキッチンを始めたという話を聞いて、そのオフィスを訪ね、自分もそこで働けるかどうか尋ねました。彼女はこう言っています。「はじめは、私が500人分の料理を出来るのか信じられない様子でした。でも村の結婚式やお祝い事で料理を提供した話をすると、そのスキルに納得したらしく、私をアシスタントシェフとして雇ってくれました」

コミュニティーキッチンは8人の女性を雇っており、彼女たちは、9時に食事を配送できるよう5時から働いています。写真:マイティ・ネパール提供

スナールさんはネパール全国のコミュニティーキッチンで働いている123人のひとりです。彼女の月給、3万ルピー(USD250)はパンデミック下で6人家族(両親、兄弟、義理の娘、姪)を養っていくのに欠かすことが出来ません。パンデミック以前、彼女は児童婚防止を目指す社会活動家でしたが、プロジェクトは資金不足に陥ってしまったのです。銀行で警備員として働いていた父親は、ロックダウン以来固定収入を得られていません。

コミュニティーキッチンで作られる食事は、米、ダール(レンティルスープ)、ホウレンソウ、野菜、ピクルス、果物、ラドゥ(お菓子)、ボトル入り水から成っています。女性達は料理を作ったり、パックしたりする時に高い衛生レベルを保てるよう特に注意しています。平均して1日250食を作りますが、時には500食の注文が来ることもあります。

スナールさんと8人のチームは9時に食事の配達を始められるよう、5時に料理を始めます。彼女が配達で何軒か回ると、何人かは配達した食事を夜に取っておいていることに気づきました。それが一日に取れる唯一の食事なのです。ロックダウンがなくてもこんなに栄養の高い食事を食べる余裕はなかったと言ってくる人もいました。こんな悲惨な状況の時に食事を食べられるなんてとうれし泣きする人もいました。

コミュニティーキッチンはそこに働く女性に収入を提供し、同時にコミュニティーの他の女性達が担うケアの負担を軽減しています。「女性はしばしば家庭で家族全員のために料理をしますが、職業として料理をして収入を得ることには躊躇しがちです」とスナールさんは言っています。「女性が経済的に自立すれば、家族内の男性に頼る必要が無くなります」

「コミュニティーキッチンで働くスタッフの多くはCOVID-19パンデミックの間、失業していたか、最低限の収入で家族を養っていました」とマイティ・ネパールのプロジェクトコーディネーターであるマヘシュワリ・バッタさんは述べています。「私たちは栄養価の高い食事を提供することで、彼女たちのエネルギーを増進させているだけでなく、このような難しい時期に免疫力を高めてもいるのです」と付け加えました。

コミュニティーキッチンが提供する無償の食事は、多様な背景を持つ女性達をサポートして、コミュニティー内に信頼と融和をもたらしています。「政府も食料品を提供はしていますが、十分とは言えません」とバッタさんは言っています。コミュニティーキッチンを運営する市民社会団体は、地方政府と協力してそれぞれの地域で何食必要なのかを割り出しています。

UN Womenネパールのプログラムアソシエイト、アンジャナ・バイジャさんはこのように述べています。「女性がリーダーシップをとることはとても大切です。パンデミック下でコミュニティーキッチンを運営した経験から、女性は単なる受益者ではなく、危機の最前線で活躍する労働者であることが分かります」

2020年6月から、マイティ・ネパールを含む4つの市民社会団体は、COVID-19で課される制限内で、断続的にコミュニティーキッチンを運営しています。UN Womenの経済的、技術的支援で、2020年6月から2021年1月までの間に、これら4つの団体は3万人に95,000食の食事とベビーフードを配達しました。