「日本はジェンダー平等に大きな貢献をできる国だ!」HeForSheプログラムマネージャー、エドワード・ワゲニ来日インタビュー

―UN Women (国連女性機関) HeForSheプログラム・マネージャーのエドワード・ワゲニをUN Women日本事務所のインターン生がインタビューをしました。

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                                                                                                                                                                                                                              ©Hikari Hida

エドワード・ワゲニは、ケニアで生まれ、高校時代までケニアで過ごした後、アイルランドや英国に渡り、勉学に励みました。その後、「Women Kind Worldwide」や英国の「Plan International」、環境団体や Christian Aid」など様々な団体に勤務し、現在はUN WomenHeForShe連帯運動のプログラム・マネージャーです。

 

Q: 昔からジェンダーに関する仕事に就きたいと思っていましたか。

私のキャリアは、家族や友人の親など、個人的な経験が基になっています。私の母親は小さなビジネス をしていましたが、彼女にはビジネスを成長させるだけの力がなかったため、発展させるには限界がありました。母の人生を振り返ってみると、彼女は8人兄弟で、8人のうち、男はたった1人だけでした。そして、彼だけが教育を受けさせてもらえました。そのため、ビジネスを行う上で、教育を受けた他の女性たちと比べると、母は明らかに限界がありました。私は、この事実に強く影響されました。

ケニアで働き始めて間もない頃、女性の意見が含まれない、重要な意思決定の場に女性がいない、そして、男性の許可がないと医者の受診も受けられない・女性たちは自分の健康を管理できない状況にあるなど、私は数々のジェンダー平等への課題に直面しました。この時点で、私は、明確な課題意識を持ち始め、何かがおかしいと思っていました。キャリアを積み重ねていくにつれ、その何かがジェンダー不平等であること、この不平等が私のこれまで経験したどの仕事においても強い影響を与えていたことに気づきました。ジェンダーの視点を重要視しない仕事は私にとって、特に興味をひかないため、私はこれまで、ジェンダーの視点を必要としない仕事をしたことがありません。全ての人が平等に扱われ、人生を平等に謳歌できる世界への本当の変化をもたらすことができないと感じるからです。

 

Q: HeForSheのプロジェクト・マネージャーとしてどんな仕事をされていますか。

HeForSheは国際的なプログラムです。この活動において鍵となるのは、政府、企業や大学のトップと行うトップダウン式のIMPACT 10x10x10 (インパクト・テン・バイ・テン・バイ・テン)ですが、世界中の人々がこの課題について何かしたいと触発されるのはボトムアップ式の方法です。私は、この二つのアプローチを用いて、HeForSheを推進しています。また、この活動の責任者として、UN Womenのプロジェクトや方針の中でもHeForSheが実施されていることを確認したり、ミーティングに参加し、HeForSheの活動理念が生きていることを確認したりもしています。要約すると、アドボカシー、プログラムの代表、資金調達の機会を見つけることです。

  

Q: この仕事で、最も達成感を感じる瞬間はいつですか。

まず、このような運動を先導できることに達成感を感じています。この活動を始めて、フィールドでは、HeForSheに関する独自の活動がたくさん存在していることを知りました。ボツワナの国会議員で構成されたHeForShe議会、日本やウクライナにおける様々な活動など、たくさんの人々が我々の活動に感化されています。そして、彼らの活動に対する改善点を私に尋ねてきます。もちろん、世界中の地域にこの運動が及ぶためにはたくさんの労力が必要ですが、自分のやっていることが、思っている以上にたくさんの人々に届いていると知れることはやりがいの一つだと感じています。

また、ニューヨークのオフィスの中でデスクに向かって仕事をするだけではなく、日本のように、私が今まで訪問したことのない国々を訪れること、そして、現地の活動について直接従事する方々から話を聞くことができることにやりがいを感じます。

 

Q: 来日中HeForSheインパクトチャンピオンの総長がいる名古屋大学で講演されました。どのような経験でしたか。

私の講演に来てくれる学生たちは、ジェンダー平等に深い関心があり、未来のリーダーでもあります。彼らがいるからこそ、ジェンダー平等はもっと速く成し遂げることができるのではないかと考えます。ある研究によると、現在のペースではジェンダー平等を達成するのには99年後になると見込まれていますが、それでは遅すぎます。世界中で活動している若い人を見ると、希望を持つことができます。

    

©Tomohiro Iwabuchi

Q: 講演の際、観客の中には男性と女性と、どちらのほうが多かったですか。

男性も女性もいましたが、やはり女性の方が多かったです。しかし、以前と比べれば男性の数も増えてきています。私は人生の中でジェンダー平等に関する講演を何回も行ってきましたが、殆どの場合、観客の過半数は女性でした。しかし、女性でも男性でもジェンダー平等について関心を持つことがとても大事です。今回(株)資生堂のご招待を受けて、社内講演を実施しました。その時、ある男性社員の方が私とジェンダーについての話をしたいと、講演の後に残りました。私は、これを聞いてとてもやる気が出ました。また、名古屋大学でも同様に、私の講演後、多くの学生らが私と話しをするために残ってくれました。私の言葉が彼らの中で何かを引き起こしたと思うと、この上もない喜びです。

 

Q: 子どもにジェンダー平等の考え方を促進する上で、親はどのような役割を果たすことができますか。

は、子どもが人生についてどのように考え、他人とどのような関係性を築いていくのかを形づける上で、大きな役割を果たします。多くの文化では、子どもの性別が決定された瞬間に、その子どもへの期待が変わります。例えばケニアでは、息子は土日に父親と出かけ、娘は母親と家で家事を行うことが普通です。そのため、非常に若い年齢で子どもはすでに自分がどうあるべきか、社会における自分の役割についての考え方が身につくのです。しかし、早い段階から親が家事を息子と娘に共有させていると、男の子は、母親や叔母、姉や妹といった女性や、社会の中で出会う女性に世話をされることが当たり前ではないという考えを持ちます。 また、最近では、ジェンダーに中立的な方法で子どもを育てる親が増えています。女の子が機械的なおもちゃで遊びたいのなら、させること。男の子が人形で遊びたいのなら、させること。これは子どものジェンダー意識に大きく影響を与えます。

 

Q: 日本での短い滞在を通して、ジェンダー平等を達成する上で、日本の最大のハードルは何だと感じましたか。

日本が「男性社会」であることは明らかでした。名古屋から東京への新幹線内には勤務者がたくさんいて、その9割以上が男性でした。日本は男性優位な社会です。そして、日本はとても裕福な国なのですが、不思議なことに他のG7の国々と比べると、ジェンダー平等に関してはまだまだ足りない部分があります。それは、日本はより均質な国であり、他の多くの国とは異なり、外の影響を受けることがあまりないため、昔からの社会的な慣習や常識が続いているからだと思います。さらに、 G7の他の国とは異なり、日本社会は内向きな文化なので、日本企業と関わり合う際、もっと働きかける必要があります。

 

Q: 最後に、この記事を読んでいる日本の人々へのメッセージをお願いします。

日本は世界中で非常に尊敬されている国であり、ジェンダー平等に大きな貢献をできる国だと思います。日本製品を通じて、日本の影響力は世界中に広まっています。なので、日本は世界に影響を与える強い力があります。ジェンダー平等の実現への努力を更に拡大していけば、世界中の人々に力強いメッセージを届けられると思います。それは、日本製品以上に、世界に大いに貢献できることと思います。

 

 

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