第4回:中岡航太郎さん UN Women アルバニア事務所 コミュニケーション&アドボカシー (国連ユースボランティア)

2019年12月20日 実施

中岡航太郎さんは2019年10月よりUN Women アルバニア事務所で国連ユースボランティアとして働いています。彼のインタビューをぜひご覧ください。

   

  UN Women アルバニア事務所にて。Photo by: UN Women Albania

【経歴】

関西学院大学総合政策学部国際政策学科4年。大学2年生の約半年間、文部科学省の留学支援制度「トビタテ留学ジャパン・多様性人材コース」に採択され、カンボジアのローカルNGOにてインターンシップを経験。帰国後、ハーバード大学の学生と共に行政・学生・民間企業・市民を巻き込み300人規模のSDGsのイベントを大阪で開催。国連ユースボランティアプログラムを通じてUN Women アルバニア事務所に派遣。大阪府箕面市出身。


 

UN Womenで働こうと思ったのはなぜですか。

 

共に働くインターン生と。Photo by: Kotaro Nakaoka

そもそも開発という分野に興味を持ったのは、小学4年生の時に見た「もし世界が百人の村だったら」というテレビがきっかけです。自分と同世代の女の子がフィリピンのゴミ山で働いており、学校にも行けない現状に、当時幼いながらに強烈な違和感を抱きました。そこから大学で「開発」を専門的に学びたいと思い、現在の学部・学科を選びました。大学では開発に関する基礎的な学問を幅広く学びながら、カンボジアのNGOで半年間インターンをして現地の住民と様々な活動をしました。NGOならではの現場に近い活動に充実感をえる一方で、政策などに関わる機会はほとんどなく、国や地方行政の掛け声一つで現場の方向性が変わる場面を多々目にしました。帰国後は支援という形ではなく、ビジネスという手法を通じて持続的な開発に関わりたいと考えるようになり、民間企業への就職を決めました。その就職活動の最中にUN Volunteer (UNV)の募集を知り、せっかくなら将来の選択肢の幅を広げるためにも、社会の中でNGOやビジネスとは違う役割を担うセクターで働く経験がしたいと考え、UN Womenに応募しました。

 

 

UN Womenでの仕事内容を教えてください。

 

中岡さんがグラフィックを作成したTシャツとカバン Photo by: UN Women Albania

 アルバニア事務所ではコミュニケーションの部署でインフォグラフィックの作成や写真撮影など、上司の手の回らない部分を任せてもらっています。例えば、11月後半から12月初めにかけて行われた16日間の「Orange the World: Generation Equality Stands against Rape!」 という、女性に対する性暴力の撤廃を世界全体で目指すキャンペーンでは、本部から提供された素材を使い、キャンペーンのTシャツと傘、カバンに使うアルバニア語のグラフィックを作りました。 仕事一つ一つに責任を感じる一方で、そもそも学部生のうちに国連で働けるのは滅多にない機会なので、国連のプロジェクトマネジメントの方法や同僚の働き方、価値観など日々の活動から多くのことを学んでいます。

 

仕事での難しさや、やりがいを教えてください

 

UN Women アルバニア事務所の同僚と。Photo by: UN Women Albania

専門知識や経験などで劣る部分があると日々痛感しています。ジェンダーは奥が深く、様々な分野に横断的に関わっているため、政治や経済、教育など多種多様な学問分野の基礎知識を持っていないと会話についていくことができないことが多く、現在猛勉強中です。また現地の政府やNGOなどとのミーティングもほとんどがアルバニア語で行われるため、内容が理解できないことがありますが、同僚に助けられながら内容を理解するように努めています。一方で自分の得意な画像編集などは上司から頼まれることが多いです。キャンペーンのTシャツは元々別のデザイナーに頼む予定だったのですが、少し時間をもらい自分で取り組み上司の意向に沿うものを作り上げました。実際にそのTシャツや傘の完成品を見た時や、キャンペーンの参加者が着ている姿を見た時はやりがいを感じました。


国連での仕事は厳しい面も多いかと思いますが、それでも成し遂げようというパワーの源は何ですか。

16 daysキャンペーンの一環として開催した展示会「What were you wearing?」に参加した時の様子。Photo by: UN Women Albania

来た当初は学部生で特別な専門知識もなく、アルバニア語も話せない自分の存在意義に悩んでいました。未だに仕事という面では本当の存在意義は見いだせていませんが、視点を変え国連という特別な環境の中で自分の将来に役に立つ視座やスキル、知識をできる限り吸収してやろうという意気込みで日々活動しています。やはりこれらを支えている原動力は、幼い頃に抱いたあの強烈な違和感と自分の知識欲や探究心、成長欲だと思います。大学生活最後の半年間を使って日本から遠く離れたこの国に来たからには、可能な限りの多くのことを学び、吸収し、そして成長して自分の将来に繋げたいです。

 

 

これからの目標を教えてください

 

UN Dayのセレブレーションにて。Photo by: Kotaro Nakaoka

 アルバニアでは今まで経験したことのないことにも積極的に挑戦して、更に自分のキャパシティを広げていきたいと思います。ジェンダーに関することだと今はジェンダー平等の達成における男性の役割に興味があります。ジェンダーと聞くと女性に関する問題のイメージが多いですが、我々男性も同じようにジェンダー間の格差の影響を受けている当事者でもあります。今後生活をする中でより多くの男性にもジェンダー平等に興味を持ってもらえるように活動していきたいです。さらに私は次年度から民間企業に就職することが決まっており、今後は大学院への進学も含めてキャリアを積み上げながら、将来的にはソーシャルビジネス等を通じ、人間と社会、地球に優しい持続可能で誰もが暮らしやすい社会の実現に関わりたいと考えています。

 

UN Womenを目指す人にメッセージをお願いします

UN Women アルバニア事務所にて。Photo by: UN Women Albania

UN Womenで働く同僚は、皆が多様性の価値を理解して個人を尊重し、様々な経験と情熱、プロフェッショナリズムを持って仕事に取り組んでいます。そうした環境でその一員として働けることはとても光栄なことですし、彼らの仕事に真剣に取り組む姿や寛容さと懐の深さは常に私を刺激して活力を与えてくれます。私自身は将来どこでどんな仕事をするかはまだわかりませんが、ここで出会った人や価値観、経験は自分の人生の財産となり、必ず将来に生きてくると思っています。

このように常に情熱を持って仕事に取り組みながら人生を楽しんでいるロールモデルのような人々に出会え、かつジェンダーに関する多様な経験が積めるのはUN Womenの一つの大きな魅力ではないでしょうか。