私たちは今、度重なる困難や危機に直面しています。紛争が根強く継続する世界は気候変動や新型コロナウイルス感染症のパンデミックに悩まされています。何百万人もの人々が貧困にあえぎ、飢餓と不安は増加の一途をたどっています。ジェンダーの不平等と差別はこれらの脅威によって助長されており、国連事務総長はこの状況を、女性と女児にとって「世界中で最も圧倒的な不正義」と呼んでいます。
「持続可能な開発目標」の達成期限である2030年まであとわずか8年ですが、世界は目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に関するほとんどの指標で後れを取っています。女性と女児のための進歩を加速させなければなりません。彼女たちの権利が完全に実現されなければ、世界は平和、開発、人間の安全保障を十分に享受することができません。
一方、UN Women、国連加盟国、世界中のジェンダー平等の提唱者、女性運動家は、正義、開発、平等を求めてたゆまぬ努力を続けています。だからこそ、私は将来を展望したとき、課題はあろうとも、それを乗り越えられると楽観しています。女性や女児たちは、決してへこたれないことを何度も繰り返し証明してきました。彼女たちが実際、平等と社会全体の利益の両方をもたらす解決策の効果を増大させます。
パンデミックは、女性が直面する深刻な不平等を明らかにするとともに、不平等を悪化させました。女性は男性よりも速いペースで職を失い、労働市場から長く離れることを余儀なくされ、家庭でより多くのケアワークを担い、一段と激しい家庭内暴力にさらされたのです。しかし、パンデミックは将来の進歩がいかに女性のスキルとリーダーシップにかかっているかも示してくれました。彼女たちは医療制度を支え、命を救うワクチンを発明し、よりインクルーシブな経済に関する世界的な議論の中心に無償のケアワークを据えました。
UN Womenは世界中の多様な女性や女児たちに寄り添い、不平等や差別から権利、エンパワーメント、自己決定に向けた変化のペースを速めることを目指しています。私たちの新たな戦略計画は、UN Womenの最初の10年間から得られた豊富なエビデンスや教訓を基に作成されており、ジェンダー平等のグローバルな推進者としての私たちのあらゆる強みをどのように活かしていくかを明確に打ち出しています。今後4年間は、国連システム最大のジェンダー平等専門知識の宝庫を活用していく予定です。また、女性運動、政府、多国間システム、民間部門、メディア、若者活動家などを結ぶ広大なネットワークを存分に利用していきます。
私たちは引き続き組織としての独特の任務を基礎として、ジェンダー平等のための規範的基準の定義を助け、事業を実施し、より広範な国連システムやその他の機関によるジェンダー平等の取り組みを調整します。
私たちの大望の実現は、パートナーシップの成功にかかっています。私たちの成果を可能にし、前進を加速させる責任を分担してくれるドナーの皆様に感謝いたします。私たちの成功は、ドナーの皆様からの支援の継続や拡大に支えられています。
ジェンダー不平等の解消は、今日の世界で最も困難な課題の1つであることに間違いありません。ですが、UN Womenの毎年のハイライトが示しているように、世界各地での経験に基づくと、私たちは前進しています。しかし、前進のスピードを大幅に速める必要があります。平等は手の届くところにあります。そのことが希望を与えてくれるはずです。そして何よりも、私たちの行動を勢いづけてくれるでしょう。
私たちのビジョンはジェンダー平等の世界です。
35,000人の女性が政治的リーダーシップのスキルを身につけました。
41カ国がジェンダー行動計画・予算を実施しました。
16億人の女性と女児が暮らす44カ国が女性の経済的エンパワーメントを推進する政策を採択しました。
4,357社の民間企業が女性のエンパワーメント原則に署名しました。
25億人の女性と女児が暮らす57カ国がジェンダーに基づく暴力を助長する差別的規範の排除に取り組みました。
27億人の女性と女児が暮らす69カ国がジェンダーに基づく暴力被害者のためのサービスを改善しました。
99の国と地域が「女性・平和・安全保障」行動計画に合意しました。
190万人の女性と女児が人道支援を受けて命を救われました。
38の国連機関が公開ダッシュボードでジェンダーパリティ(公正)について報告しました。
変革に向けた1,000のコミットメントがジェンダー平等フォーラムで打ち出されました。
71の国連機関がUN-SWAP(システムレベルの行動計画) 2.0を通じてジェンダー平等の進展を報告しました。
である理由
UN Womenはジェンダー平等と女性のエンパワーメントのグローバルなチャンピオンであり、自らの基準に基づいて行動し、厳密な証拠を持って提唱し、専門知識によって主導します。変化を加速させるために人々を招集し、パートナーシップを築いています。世界中で、UN Womenの活動は平等とエンパワーメントに向けた具体的な前進を実現することで女性の生活を向上させています。
現在はいくつもの脅威と不確実性が重なる中、困難な状況にあります。それでも、私たちUN Womenは周りを見渡し、先を見据えて、変革はなお可能であると考えています。誰もが変化を起こす役割を担っており、すでに多くの人が立ち上がっています。ここでは、私たちが楽観的である10の理由、歩み続けるための10の理由をご紹介します。
パリで開催された「平等を目指す全ての世代フォーラム」のオープニングセレモニー
5万人以上の人々が「平等のために行動せよ」という呼びかけに応え、第4回世界女性会議で合意された画期的な1995年「北京行動綱領」の実現に向けて全力で行動を加速させることを約束しました。その原動力となったのは、女性と女児の権利のためにUN Womenが立ち上げた2年間の運動である「平等を目指す全ての世代フォーラム」であり、これは2021年にメキシコシティとパリで開催されたイベントとして結実しました。フェミニストや提唱者たちが世代を超えて集まり、それぞれの意見を述べ、行動を計画しました。各国・政府の首脳が出席して強力な政治的コミットメントを発したほか、企業リーダーや慈善団体の代表、文化・社会的なインフルエンサー、国連に所属する著名人なども出席しました。若い活動家たちは挑戦を表明しました。「若手フェミニストのアジェンダの下で団結する準備はできていますか。なぜなら、我々は今こそ真の実質的なインパクトを強く求めるからです」。
このフォーラムは多様な参加者の意欲を掻き立て、ジェンダー平等を実現するための野心的な行動に向けて1,000のコミットメントが打ち出されました。また、迅速な進展を推進するために、400億米ドルという破格の金融投資が発表されました。参加者は「ジェンダー平等グローバル加速計画」を共同作成する機会を得ました。ヨーロッパや中央アジアの若者たち、アフリカの「平等を目指す全ての世代」運動に参加している活動家、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の音楽家など、世界のあらゆる地域から集まった人々が意見を交換しました。
現在は、コミットメントを行った人々が約束を実行に移しています。UN Womenを触媒とする行動連合は、からだの自己決定権(bodily autonomy)から無償のケアワーク、経済的正義に至るまで、ジェンダー平等の中核となる問題での進展を促進しています。新たな「女性、平和、安全保障および人道的行動に関するコンパクト」には160近くの組織が署名しました。彼らはチャド湖流域の問題を抱えたコミュニティに平和をもたらすために女性リーダーに資金を提供し、融資の拡大を提唱するとともに、女性、平和、安全保障に対する既存の(そして実行が大幅に遅れている)コミットメントを果たすよう安全保障理事会や各国政府に迫っています。
経済学はかつて、主に男性の領域と見なされていました。そして今、フェミニスト経済学が登場しました。これはどのようなものなのでしょうか。第一に、経済とは市場を通じて供給される金銭的取引以上のものであると理解することです。第二に、経済の繁栄は収入を得るための仕事以外のものにも左右され、その中には家族の世話をするための労働も含まれるということです。そして、私たちは地球を搾取するだけでなく、守る必要があるということです。ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、健康、食料安全保障は基本的なものであり、選択するものではありません。
UN Womenは、パンデミックによって女性が困難な状況に陥ったことを受けて、フェミニスト経済学を推進しています。パンデミック中、女性は男性よりも速いペースで職を失い、家庭内暴力という影のパンデミックに直面し、より多くの無償のケアワークを請け負いました。いかにして経済を全ての人にとって役立つものにするかを示すため、私たちは国連、市民社会、研究機関から100人の世界的な専門家を招集し、「持続可能性と社会正義のためのフェミニスト計画」を策定しました。この計画は、生活、ケアワーク、環境に関する経済・社会政策を再考し、優先順位を見直すよう求めています。より平等で持続可能な未来のための計画であり、今すぐ始めるための実用的なアイデアが盛り込まれています。UN Womenはすでにラテンアメリカ・カリブ海諸国で今後進むべき道を示しており、地域経済委員会との緊密な協力の下、子ども向けやその他のケアサービスを提供する国内制度の設計・実施に関して11カ国を支援しています。2021年には、コスタリカとパラグアイが国家ケア政策の展開を開始しました。
変化の一部はより正確な測定からもたらされなければなりません。UN Womenは70カ国で「Women Count」プログラムを拡大しています。「Women Count」プログラムは、経済や持続可能な開発目標において女性に関するより質の高いデータを収集するのに役立ちます。例えばモルディブでは、国家統計局と民間通信事業者のジェンダー調査によって統計が作成され、脆弱な女性労働者を対象とした新たな社会保護措置やメンタルヘルス・サービスの改善につながりました。メキシコでは、革新的なSNS・キャンペーンにより、女性のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を妨げる障害に関する調査結果に広く一般の注目が集まりました。隠しカメラには、女性が大半を占める家事労働者の標準的な条件で働くよう求められ、求職者がショックを受ける様子が映し出されていました。
コロナ禍からの復興、国家予算、社会保障制度に共通する点は何でしょうか。それは、女性が直面する特有の問題への対処が増えているということです。ゆっくりと、しかし確実に、女性の優先事項は国の政策の主流になりつつあります。UN Womenはこの動きを後押ししています。国連開発計画(UNDP)と共同で立ち上げた革新的な新型コロナウイルス政策追跡により、女性のニーズに応えるための政策対応に大きな欠陥があることが判明すると、20カ国以上が方向修正をしました。例えばチリでは、女性起業家や子育てしながら働く女性を支援するための補助金が導入されました。モロッコ、モザンビーク、ネパールは、UN Womenの支援を受けて、パンデミックで大きな打撃を受けた女性を対象とした現金給付を開始しました。
今では60カ国以上が国家予算とジェンダー平等の優先事項との整合性を追跡するシステムを導入しており、これはUN Womenが長年提唱してきたものです。予算の再考によりアルバニアでは、女性農家への補助金拡充や女性警察官の新規採用などの変化をもたらしています。UN Womenはジェンダーギャップを埋めるための債券に関する新たなガイドラインなど、革新的な資金調達においてリーダーシップを高めています。こうしたガイドラインはメキシコで使われているほか、ラテンアメリカ・カリブ海諸国でジェンダーレンズ投資を推進する一環として利用されています。国連では、エネルギーへのアクセス、移住、女性に対する暴力など、多様で中核的なジェンダー平等問題に関する国際的活動の背後で、UN Womenがシステムの総力を結集しています。
ジェンダー平等が主流になるにつれ、女性も次第にそうなっています。ジェンダーパリティ(公正)への道のりはまだ遠いとはいえ、流れは正しい方向に向かいつつあります。これまでにない数の女性が公職に就いたり、大企業を率いたりしています。女性は新型コロナウイルスの研究を主導し、医療従事者の大多数を占める労働力として医療システムを維持してきました。女性のリーダーシップの詳細については、ヨーロッパと中央アジアの視点から見た「Generations Talk Gender」をご覧ください。ラテンアメリカ・カリブ海諸国では、女性が人権と変革を求める動きの最前線に立っています。
正義は、法の下での女性と女児の平等な扱いにかかっています。しかし、多くの法制度にはいまだに差別的な条項が残っているのが現状です。女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)、結婚相手、土地所有、さらには仕事さえも制限されているかもしれません。それでも、近年では法改正が進んでいます。UN Womenはこうした変化の多くを提唱し、女性運動家、国会議員、司法当局、警察などとともに公正な法律や法慣行を推進しています。
過去4年間で、私たちは世界中の760以上の法改革に取り組みました。その半数は、あからさまな差別的法律を是正したものです。44カ国の16億人の女性と女児が、より安定した仕事やケアサービスの利用などによる経済的エンパワーメントを全面的に支援する法律や規制を獲得しました。モルドバでは、2021年にUN Womenが家族に優しい職場に関する調査や支援運動を行った結果、3歳未満の子どもに対する雇用主提供のケアサービスを拡大する法案が採択されました。エジプトでは、金融規制当局と協力し、女性による金融手段の利用を可能にする新たな基準の策定を支援しています。UN WomenとIPU (列国議会同盟)は、あらゆる国の議員がジェンダーに配慮した法律作りに取り組めるよう、基本的なことを解説したハンドブックを発行しました。
各国議員に占める女性の割合はまだ4分の1をわずかに超えたばかりですが、選挙や意思決定におけるジェンダー・バランスを実現するための法律を制定する国が増えています。UN Womenが事務局を務める「国連女性の地位委員会」は2021年に野心的な基準を提唱し、全ての国が男女同数を目指すべきであることに合意しています。キルギスでは女性の参加枠が設けられた結果、地方選挙で突破口が開かれ、地方議会の議席に占める女性の割合がわずか10%から今では38.7%へと上昇しました。
少し前まで、ジェンダーに基づく暴力はほとんど問題にされず、制裁を受けることもありませんでした。暴力の発生率は世界各地で依然として高く、女性の3人に1人が人生のある時点で被害を受けており、新型コロナウイルスのロックダウン中に状況が悪化しました。しかし、暴力を終わらせるというコミットメントは以前にも増して明白になっており、法律の厳格化、予算の拡大、より包括的なサービス、意識の向上と予防の重視、有害な社会規範からの脱却などにそれが反映されています。過去4年間、UN Womenは支援運動と専門知識を通じて、25億人の女性と女児が暮らす57カ国が暴力根絶のための国家戦略を強化する手助けをしてきました。今では69カ国が暴力被害者向けのサービスの質を向上させています。
2021年、ウガンダはUN Womenと国内の女性運動が連携したことに力を得て、重要な法改正を成立させました。法改正の1つは女性の財産権を保護するものであり、これによって暴力に対する脆弱性を軽減することが証明されています。2つ目の改正は、全ての雇用主に職場でのセクシャルハラスメントを防止する措置を講じるよう求めるものです。法律を守ることは、そもそも法律を成立させることと同じくらい重要であるため、UN Womenは各国による司法対応の改善も支援しています。アジア・太平洋地域では、検察や警察に対する専門的な研修で先駆的役割を果たしています。ホンジュラスとウルグアイでのキャンペーンや、ケニアでのソーシャルインフルエンサーを通じたキャンペーンなど、創造的な支援運動も役に立っています。アラブ諸国では、UN Womenが先頭に立ち、オンラインでの暴力と、それがいかにたやすくオフラインでの物理的な脅威や犯罪に発展し得るかについて認識を広めています。
UN Womenは世界中で、ジェンダーに基づく暴力の度合いを明らかにする証拠をさらに明確にするための活動を主導しています。コロナ禍中の影のパンデミックの測定に関して私たちが発行した一連の包括的な国別レポートやグローバルレポートは、この問題を絶えず世間の目に触れさせ、法律やサービスを改善するための政策提言を提供しました。また、タイの移民やアルゼンチンの農村部や先住民の女性など、最悪のリスクに直面している女性たちにも資金を振り向けています。「国連女性に対する暴力撤廃信託基金」から2021年に受けた助成金は、市民社会団体が暴力の予防策や対応措置を2,250万人の女性と女児に拡大するのに役立ちました。
変化するアフガニスタンにおける女性と女児の権利のための戦い
ウクライナでは、戦争によって何百万人もの女性や女児たちが家を追われ、紛争関連のレイプや性的暴力を受けています。アフガニスタンでは、女性は家に閉じ込められ、仕事や学校に行くこともできません。これらは、世界各地の危機が女性や女児に大きな犠牲を強いている2つの例に過ぎません。しかし、これらは間違いなく、女性たちはたとえ押し倒されても立ち上がり続けることも示しています。
「アフガニスタンの女性は大臣や女性の権利の活動家、パイロット、スポーツ選手になり、ロボット工学チームの指揮をとりました。そして、私たちは今手にしているもののために戦わなければならなかったのです。何かを手に入れたら、それを手放してはいけません。私たちはそのために戦います...いずれわかるでしょう」と元国会議員のナヒード・ファリドは述べています。彼女はアフガニスタンの女性人権擁護者の代表団の一員として、タリバンがアフガニスタンを支配した直後に国連安全保障理事会のメンバーや他の加盟国に向けて演説を行いました。信じられないほどの困難にもかかわらず、市民社会運動を維持し、進歩と説明責任を求めるために、UN Womenがアフガニスタンの女性たちとどのように協力しているかについて、カブールからの専門家の見解をご覧ください。国際援助を女性の権利やジェンダー平等と整合させるための継続的な訴えがさらなる推進力となっています。
ウクライナでは、UN WomenとCAREが実施した紛争に関する初のジェンダー調査によって、多くのコミュニティで女性が人道支援を主導していることが示されました。UN Womenは、国連による人道支援活動のあらゆる側面にジェンダー平等を組み込むための調整を行い、国内の女性団体に資金を提供しています。私たちは、避難民や移住民に食料、避難所、法的支援、メンタルヘルス支援などを提供する女性団体のたゆまぬ勇気ある活動を支援しています。2021年には、世界各地の1,241の現地女性団体やグループと協力し、危機の影響を受けた女性や女児に手を差し伸べるための人道支援計画やサービスに取り組みました。今では91カ国で、災害リスク評価や災害後のニーズ評価にジェンダー平等規定が盛り込まれています。バングラデシュの農村部の女性たちは、その結果の1つとして、より安全で安心できる家庭と生活を実感しています。
平和交渉のテーブルは長らくほぼ男性だけの領域でした。今日、世界中のほとんどの公式協議における「欠けている平和」は女性がテーブルにつくことであり、このことは表彰を受けたレバノンでのUN Womenのキャンペーンによって浮き彫りになっています。それでも、扉が開く兆しはあります。ジェンダー平等に関して少なくとも何らかの条項がある平和協定の割合は、2018年の13.8%から2020年には28.6%へと倍増しました。その多くは、UN Womenの説得力のある国内外の専門知識や提唱活動によるものです。
私たちは女性団体と連携してそうした条項を盛り込むように主張しており、2021年には646の女性団体が参加しました。さらに、UN Womenが事務局を務める「女性の平和と人道基金」は、危機の影響を受けた26カ所の草の根市民社会の女性リーダーに資金を提供しています。2021年には、450を超える団体がこれらの資金を利用して一から平和を築き上げました。国連では、UN Womenがジェンダー平等に関する行動を調整しており、国連が主導または共同主導している全ての和平プロセスにおいては、調停チームや交渉当事者に女性を参加させているほか、女性の市民社会メンバーに意見を求め、ジェンダー平等の専門知識を活用しています。女性調停者の地域ネットワークは、平和調停において女性が正当な役割を果たすためのさらなる分野を開拓しています。
性的暴力を戦争戦術としてではなく、処罰すべき戦争犯罪として扱う画期的な判決が増えていることも進歩につながっています。UN Womenに登録されている調査員たちは、有罪判決を確実にするための証拠の文書化を主導してきました。すでに、ウクライナに関する調査委員会を支援するためにジェンダー平等の専門家を派遣する準備が進められています。イエメンのライラ・ルトフ・アル・タウルのような女性の人権擁護者に対する暴力の増加など、新たな領域に踏み込む調査も増えています。
It's not too late:Climate action for women, by women
街頭から企業の役員室に至るまで、女性が気候変動対策を主導しています。アメリカでは、環境NGO「セリーズ(Ceres)」のミンディ・ラバーCEOが資本市場のリーダーたちに気候の安定化と経済的包摂の拡大を呼びかけています。ネパールでは、カマラ・タパが自然と調和した生き方について先住民の女性からいかに多くのことを学べるかを世界に知らしめています。イヴォ・マルコヴィッチはセルビアで環境正義のために戦っています。ヘレン・ブルグのビデオ詩は、タンザニア連合共和国の気候変動対策を喚起しました。UN Womenは気候変動対策における女性のリーダーシップを世界的に増やし、国連機関のトップを集めてこれを推進しています。
実際、議会などで女性がトップに就くと、排出量規制などの措置が厳格化されます。女性の自小作農家が生産資源を平等に利用できるようになれば、農作物の収穫量は30%ほど増加し、最大で1億5,000万人の飢餓が解消されるでしょう。さらに、森林伐採や炭素排出量も減少します。ジェンダー平等にとって良いことは気候正義にとっても良い場合が多いことを知っているUN Womenは、過去4年間で約45万人の農村部の女性たちを支援し、生産資産を利用しやすいようにしてきました。マラウィの気象警報システムやモロッコの気候変動に強い漁業などを通じて、47カ国で245の女性団体や防災関係者とともに、女性が気候変動の影響にうまく適応できるように手助けしました。
国際的な気候変動交渉においてジェンダー平等が正式に議論されるまでには時間がかかりましたが、それは実現しつつあります。UN Womenは国連気候変動枠組条約の下で各国政府と協力し、ジェンダー行動計画を始動させました。2022年、女性の地位委員会は、気候変動、環境、災害リスクの軽減に関する全ての行動における女性と女児の完全かつ平等な参加とリーダーシップを促進するために、世界の指導者たちが取り組むべき青写真に合意しました。
全ての人間は自由で、尊厳と権利について平等です。自分の体のことは、自分で決める権利があるのです。それにもかかわらず、LGBTIQ+の差別は依然としてひどい状況にあります。20億人の人々が、合意に基づく恋愛関係の一部が犯罪となる場所で暮らしています。LGBTIQ+の人々は、脅迫、投獄、失業、いじめ、強制不妊手術、その他からだの自己決定権の甚だしい侵害を受けやすい立場にあります。
それでも、潮目は変わりつつあります。世代交代が進む中、世界のLGBTIQ+運動は権利のために立ち上がり、差別に立ち向かっています。歴史のどの時点よりも多くの人々が、自分の望む相手と結婚し、自分にふさわしい医療サービスを受け、公式の書類で男性または女性以外の性別を選択できるようになりました。
UN Womenはジェンダー平等のグローバルな推進者です。その基本は、多様な性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、ジェンダー表現、性的特徴を持つ全ての人々と連帯することにあります。私たちは、権利を推進し、女性であることの意味などについて自由に話し合い、人道支援活動への参加を可能にするような手段を開拓し、活動家の声を増幅して多様性、勇気、強靭性を称えることを目的としたキャンペーンを展開しています。リベリアの市民社会スペースの開放、ブラジルのLGBTIQ+権利擁護者やレバノンのクィア組織への助成金の提供といった成功事例を共有しています。また、その力を知っているからこそ、活動家の声を増幅しています。例えば、カンボジアのLGBTIQ+活動家であるティーダ・クイは次ように述べています。「トランス男性として、自分と似たような話を聞くと、自分の話を聞いてもらえたように感じます。社会の成長は、お互いの話に耳を傾けることからしか始まらないと思います」。
ジェンダー平等は、より平和で豊かで公正な世界を通じて全ての人に恩恵をもたらします。ジェンダー差別をなくし、女性と女児の権利を守るためにフェミニストや支持者として立ち上がる男性や男児がますます増えています。ジェンダー平等を求める国連のグローバルな連帯運動である「HeForShe」とその独自の「HeForShe #IDo宣言」通じて、240万人以上の男性と男児が変革に向けた個々の誓約を行っています。
トルコの有名な俳優ケレム・バーシンは、有害なジェンダー規範の撲滅を支持するフェミニストおよびジェンダー平等の推進者として誇りを持っています。アメリカからは、俳優で映画監督のジャスティン・バルドーニがジェンダーに基づく暴力をやめるよう男性に呼びかけています。モザンビークの歌手スチュワート・スクマや、マリのポエトリースラマー(詩の朗読競技者)兼作家のソリ・ディアカイトも同様です。アリー・ボンゴ・オンディンバ閣下は、ガボン大統領としてジェンダー平等を推進しています。フィジーでは、サニ・ダオニとトム・ダリが信仰コミュニティと協力し、暴力を拒否して平和を受け入れるために活動しています。
UN Womenはアルゼンチンの国連カントリーチームを総動員して、家庭での「ケアの分担」を呼びかけました。西バルカン諸国では、人気のある男子サッカー選手が男性たちに対して、有害な男らしさを捨て、考え方を変えて平等を受け入れるよう訴えています。UN Women親善大使のアン・ハサウェイは「平等を目指す全ての世代フォーラム」で、ケアワークに対する認識を改めるよう世界に呼びかけました。アジア太平洋地域のSNS・ユーザー達は、ジェンダー神話を打ち砕くための解決策について意見を交換しました。このような方策は有効であり、世界中で妻への暴力が社会的に受け入れられなくなっていることを示すデータがそれを裏付けています。このような動きの一部は、予防、社会規範の変革、男性と男児の参加を求めるUN Womenの呼びかけによって弾みがついています。つまり、変化は起きているのです。
Make the Difference
2021年にUN Womenが受け取った拠出金は5億5,630万米ドルと3年連続で増加し、過去最高を記録しました。
財政的に厳しい時期にもかかわらず、179の資金提供パートナーの皆様から惜しみない拠出をいただいたことに感謝いたします。パートナーの皆様のご支援により、私たちはジェンダー平等と女性のエンパワーメントのためのグローバル・アジェンダを推進し続けることができました。
通常資金の拠出を増やしていただいたフランス、インド、アイルランド、ルクセンブルク、ノルウェー、アメリカ合衆国、資金提供パートナーのトップ5である欧州委員会、フィンランド、マルチ・パートナー信託基金事務所(MPTFO)、ノルウェー、スウェーデン、そして民間部門パートナーのトップ5であるアリペイ財団、BHPビリトン財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、デビアスPLC、アイスランド国内委員会の皆様には特に感謝の意を表します。
過去4年間にわたり、UN Womenは強力なビジネスプロセスを土台として、ますます効率的で効果的、かつ説明責任を果たせる組織構造を確立してきました。2021年には10年連続で監査意見を受け、事前の提言を全て実行したという大きな成果を上げました。コロナ禍の困難にもかかわらず、強固な事業継続計画とリスク軽減措置のおかげで全体的な活動実績は良好で、継続的な信頼と信用を保証しています。
新たな「戦略計画2022-2025」に着手する中、女性と女児の生活におけるジェンダー平等やエンパワーメントに関する具体的な進展と、全ての人のための持続可能な開発目標の実現を目的とする私たちのグローバルな取り組みは、柔軟に使える予測可能な資金提供でご支援くださるパートナーの皆様に支えられています。
任意拠出金
通常資金
その他の資金
の資金提供パートナー
の国連加盟国
の民間部門パートナーが2,170万米ドルを拠出