第11回林佐和美 さん UN Women 中東・北アフリカ地域事務所 プログラム分析官
林佐和美さんは2023年1月よりUN Women 中東・北アフリカ地域事務所 プログラム分析官として働いています。彼女のインタビューをぜひご覧ください。
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【経歴】
国内のビジネスコンサルティング会社にて官民連携事業に携わった後、UN Women(国連女性機関)インドネシア国事務所およびナイジェリア国事務所にて、ジェンダー主流化、ドナーとの連携、平和・安全保障に関する業務等を担当。2023年1月からUN Women中東・北アフリカ地域事務所にて、プログラム分析官(JPO)としてジェンダーに関するデータ分析等を担当。東京大学教養学部卒業、コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程(国際開発・ジェンダー専攻)修了。 福岡県出身。
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UN Womenで働こうと思ったのはなぜですか。
大学時代たまたまジェンダーに関する授業をとり、同問題に興味を持つようになったことがきっかけです。私が通っていた大学には、授業の先生の語り口が非常に面白いと評判になっていたジェンダーの授業があり、軽い気持ちから当時受講しました。その授業の内容が当時の私にはとても新鮮で、身の回りに溢れている「当たり前」とされている事柄を疑うきっかけとなりました。たとえば、国内でトップレベルとされるような大学には女子学生が少ない傾向にあることや、女性の政治家が少ないことなど、それまでは「当たり前だよね」と思っていたことについて、なぜそれらが起きているのか考えるようになりました。
思い返せば、子どもの頃から、生徒会長など学校のリーダー的役割は男の子が担当することが多かったですし、また進路選択のタイミングでも、男の子はチャレンジを促されている人が多かった一方、女の子は親から地元を離れることを反対されたり、不合格となる可能性の低い学校を受験するよう親から言われたりするケースを周りで見かけました。そういった子供時代からの周りからの期待や選択肢の自由度の違いが、社会の様々な場面での男女比につながっていく、ジェンダー問題は私たちの日々の生活と切り離すことができないのだと感じるようになりました。
このようなジェンダー問題に対する関心を持ち続けながら民間企業で経験を積むうちに、女性の経済・生計支援などに自分の民間企業での経験が生かしていけるのではないか?と感じるようになりUN Womenで働くことを決意しました。
UN Womenでの仕事内容を教えてください。
1年間勤務をしたUN Womenナイジェリア事務所では、主に3つの業務を担当しました。1つ目は、他の国連機関、また外部の援助機関と連携しジェンダー主流化を進める業務です。これはジェンダー平等を目標として掲げるUN Womenだけではなく、国連内外の他の機関と協力しながら、機関の垣根を超えて皆で情報共有や合同プロジェクト等を行い、より効率的かつパワフルに、ナイジェリアにおけるジェンダー主流化の歩みを進めようとするものです。
2つ目は、平和・安全保障に関するプログラムの支援です。紛争下において女性の受ける影響を最小限にし、かつ女性を紛争の被害者としてではなく平和構築のアクターとして位置づけるため、ナイジェリア政府や治安維持機関等に対して政策の立案・実行等に関する調整業務や研修等を行っていました。
3つ目は、ドナーとの連携業務です。国際機関の資金は各国の政府からの支援にて成り立っているのですが、その資金を拠出する分野は、各政府によって異なっています。そのため、ナイジェリアの国事務所の所長が各国の大使に会いに行く際などに、各政府の資金拠出の優先順位を調査した上で、UN Womenとして伝えるべき内容等をまとめていました。
国際女性デーを記念したサッカー大会にて。チーム国連。
仕事での難しさや、やりがいを教えてください。
難しさ:
仕事に対する当たり前が違うことです。日本の民間企業で仕事をしていた際は、こまめに連絡を返すことや締め切りを厳守することは当たり前とされていましたが、そうした当たり前が通用しないことも多くありました。そうした環境下では、自分の当たり前を単純に押し付けようとするのではなく、相手の文化やスタイルを理解できるよう最大限努めながら、その場に合った仕事の進め方をできるよう試行錯誤していました。
また、開発課題の中で、ジェンダーへの取り組みの優先順位が低く位置づけられていると感じることも多々あります。優先順位が低いということは、他の問題のプロジェクトに資金・人的リソースが割かれ、同問題への援助が希薄になるということです。そのような状況下で、いかにジェンダー問題解決の喫緊さを先方に認識してもらい、言葉だけでなく実際にリソースを配分してもらえるかが重要だと感じています。
やりがい:
パワフルで情熱に溢れる方達と日々一緒にお仕事をさせていただけることです。これまで出会ったジェンダー問題解決のために働かれている方々の中には、過去に厳しい経験をされてきた方も多くいらっしゃいました。そのような苦い経験を「これからの若い女性たちに経験して欲しくない」という思いから日々仕事をしている同僚や上司、また外部機関の方々と出会う度に胸が熱くなり、自分も頑張らなくてはと改めて思わされます。
国連での仕事は厳しい面も多いかと思いますが、それでも成し遂げようというパワーの源は何でしょうか。
情熱溢れる方々との出会いに加えて、「この仕事の先に誰がいるのだろうか?」という問いの先に私のパワーの源はあるのだと思います。
例えば、11月25日は「女性に対する暴力撤廃の国際デー」なのですが、その日から12月10日の16日間は、ジェンダーに基づく暴力撤廃に向けたキャンペーンが毎年世界中で行われています。この期間中の業務量は通常時と比べると多くなりがちなのですが、これまで暴力によって命を落としてしまった女性たちや、今なお起こり続けている暴力のサバイバーの方々など、業務を行うその先にいらっしゃる方々のことを想い浮かべると、自然と力が湧いてきます。
ジェンダーに基づく暴力撤廃に向けたキャンペーンのイベント終了後。
これからの目標を教えてください。
美しい言葉を並べて終わるのではなく、実際に理想を行動に移し、より大きなインパクトを現地に還元できるような実力をつけていきたいと思っています。
UN Womenを目指す人にメッセージをお願いします。
国連で仕事を得るには、関連した職務経験や修士号等が必要で、人によっては何年も時間が必要になることもあるかと思います。私も就職活動では苦労しましたし、これからも国連での不安定なキャリア形成には様々な苦労が伴うのだと思います。しかし、「為せば成る」という思いがあれば、必ずいつか道は拓けると信じています。私は、ジェンダー問題の解決に情熱を持っている方々と共に働けることは、とても幸せなことだなといつも感じています。情熱溢れた皆さんと近い将来にお会いできることを楽しみにしています。
同僚の誕生日会&林さんの送別会にて、UNWomenナイジェリア事務所の同僚と。