第6回:岡田絵美さん UN Womenミャンマー事務所 プログラム・マネージャー

2020年9月11日 実施

岡田絵美さんは2018年7月よりUN Womenミャンマー事務にてプログラム・マネージャーとして働いています。彼女のインタビューをぜひご覧ください。

   

  Photo by: Emmi Okada 

【経歴】

シドニー大学国際政治学科・法律学科卒業。東京大学人文社会系研究科博士課程修了。博士論文の課題は非暴力と大乗仏教。オックスフォード大学国際開発学科にて第二修士号を取得。西オーストラリア州最高裁判所で裁判官補佐を二年近く務め、オーストラリア弁護士資格を取得。法律分野での職務のほか、内閣府国際平和協力本部事務局研究員、国連大学学長室ジュニアフェロー、日本紛争予防センター事務局長補佐、多摩大学グローバル学部非常勤講師、日本大学人口研究所英語編集者など、各種業務に従事。2015年3月よりJPOとして国連開発計画(UNDP)東ティモール事務所民主ガバナンス・ユニットへ着任。その後同事務所でプログラム・スペシャリストに昇進。2017年にUNDPミャンマー事務所の民主ガバナンス・ユニットに半年出向。2018年7月より現職。


 

UN Womenで働こうと思ったのはなぜですか。

2017年にUNDPミャンマー事務所の民主ガバナンス・ユニットに半年出向したことが大きなきっかけとなりました。当時はUNDP側から、ミャンマーのラカイン州開発支援に関するUNDPとUN Womenの共同事業の形成に関わりました。2018年にはUN Women側からこのプログラムで働く機会をいただきました。 

  

ラカイン州Mrauk-Uの女性農業者と共に。 Photo by:UN Women Myanmar Office 

 

 

UN Womenでの仕事内容を教えてください。

現在UN Womenのラカイン事業のプログラム・マネージャーとして勤めています。ラカイン事業は紛争影響下にあるコミュニティ(村落及び国内避難民(IDP)キャンプ)に住んでいる女性のリーダシップと生計向上を目的としたプログラムです。毎日の仕事内容は基本的にはプロジェクト・マネージメントなのですが、現在はドナーが三者(日本、カナダ、ドイツ)いますので、ラカイン事業は比較的大きなプログラムに拡大しています(UN Womenミャンマー事務所では一番大きな事業です)。限られた意味でのプロジェクト管理(アクティビティと予算の計画・管理、モニタリング、スタッフの監督、報告書作成等)のみならず、ドナー・実施パートナー・他国連機関との調整も多いです。ラカイン州での国連支援に関して「人道・開発・平和の連携」という言葉が使われますが、この事業はまさに人道と開発が交差するスペースで行われるため、様々なアクターと調整しながら事業を実施しています。 

2018年8月、ラカイン・プログラムのローンチ・イベント―ラカイン州シットウェにて。 Photo by:UN Women Myanmar Office 

 

 

仕事での難しさや、やりがいを教えてください

仕事の難しさ:ラカイン事業の第1フェーズは日本の補正予算で行われまして、予算の性質上、事業実施を非常に限られた期間内で終了させなければなりませんでした。しかも私が着任したのは事業開始3カ月後でしたので、実質的な事業期間は9カ月でした。限られた期間内での実施が最大の課題だったといえます。第2フェーズからはカナダとドイツがドナーとして加わりました。 

やりがい:事業でやっていることが実際に村落やIDPキャンプの女性たちの生計向上やリーダーシップ育成に繋がっていると実感することです。例えば、これら紛争影響下にあるコミュニティでジェンダー・リーダシップ・プログラム(GLP:Gender Leadership Programme)を行っているのですが、このプログラムに関わったIDP女性4名が現在キャンプ 管理委員会(CMC:camp management committee)のメンバーに選出されています。我々のリーダシップ・プログラムの成果が間接的にキャンプ全員に及んでいると考えると、やってよかったと感じられます。

2019年国際女性デー、ミャンマーの首都ネピドーにて。 Photo by:UN Women Myanmar Office 

 

 


国連での仕事は厳しい面も多いかと思いますが、それでも成し遂げようというパワーの源は何ですか。

上記のやりがいに由来すると思います。

そのほか、2018年に自分が母親になったということも一種の「パワーの源」だといえるでしょう。実際に母親になって、どれだけ出産前後が身体的にも心の面でも脆弱な時期であるか、また幼い子どもを育てながら仕事を両立することがいかに難しいか、世界中の母親が毎日奮闘する問題を実際に体験して、女性のエンパワーメントとは何なのか、どんなかたちをとるべきなのかと深く考えさせられました。仕事と家事の「ダブル負担」を抱えている女性たちはただでさえ大変ですが、紛争影響下にいる母親たちの状況と心境は想像つかないところがあります。このような思いが事業を成し遂げようという意欲にも繋がっています。

  

2019年の実施パートナーとのワークショップ―ヤンゴンにて。 Photo by:UN Women Myanmar Office 

 

 

これからの目標を教えてください

現在の仕事の文脈からいうと、紛争影響下の母子の福利厚生に関する仕事をもっとできればと思います。例えば、ミャンマーのカチン州のIDP人口の約70%が女性と子どもです。このような女性たちの生活向上に実質的に貢献することを、継続的な目標としています。

また、経歴上、大学や研究機関で過ごした時間が長いので、将来的には国連や途上国で得た経験を次の世代の知識や原動力の育成に生かせたらと願っています。

2019年9月、ラカイン・プログラムのチームPhoto by:UN Women Myanmar Office 

 

UN Womenを目指す人にメッセージをお願いします

UN Womenは組織名のとおり、女性のエンパワーメントとジェンダー平等を掲げた国連機関なので、UN Womenで働きたいと思う人にはこれらの問題に取り組みたいという意欲があることが重要です。他の国連機関と比べて、市民社会からの活動家や運動家のバックグラウンドをもつスタッフも多いので、このような人たちにもよいと思います。UN Womenで管理職や総務・業務部ではなく、領域別の問題に深く関わりたいと思うのであれば、女性・平和・安全保障 (WPS:Women, Peace and Security)、女性の経済的エンパワーメント(WEE: Women’s Economic Empowerment)、女性とガバナンス、女性に対する暴力の撤廃(EVAW:Ending Violence Against Women)など、一つの領域分野を追求し、関連知識や経験を得ることを強くお勧めします。

2020年8月、ヤンゴン事務所の同僚と共に。 Photo by:UN Women Myanmar Office