気候変動に対してレジリエンス(強じん性)の高い農業を通じた女性のエンパワーメント

課題

農業におけるジェンダー格差を是正することは、女性の生活に変革をもたらし、ジェンダー平等の実現と社会全体の持続可能な開発に大いに貢献します。

全世界の農業従事者の3分の1以上が女性であることを考慮すると、農業は女性の労働の中で最も重要な分野の一つです。しかし女性農民は、土地や情報、資金、作業時間を節約するインフラ、技術、およびサービス、そして市場へのアクセスを制限するような、多くの構造的障害に直面しています。これらの障壁を取り除く適格投資を通じて、農業におけるジェンダー格差を是正することは、女性のエンパワーメント、経済発展、そして社会のレジリエンス(強じん性)が進む大きなチャンスとなります。アフリカでは、農業投入物へのアクセスが平等になった場合、農業生産高が20%上昇すると推計されています。

しかし同時に、気候変動はそのような絶好の機会を少なくしていくのです。気候変動は、女性農民が直面する既存の障壁やリスクを更に拡大し、更に新たな障壁を生み出す影響力を持っています。ほとんどの農業政策と投資は、男性と女性が利用できる資源における格差や、役割、労働負担、その他の障壁、そしてこれらのジェンダーに基づく差異が、いかにジェンダー平等を拡大し悪化しているのか、未だに考慮できていません。

気候変動が起きている現在、農業におけるジェンダー格差を是正するための一致協力はなされておらず、女性農民は格差拡大の悪循環に陥る危険に晒されています。

われわれの解決策

女性農民の気候変動に対するレジリエンスの向上は、UN Womenのフラッグシップ・プログラム・イニシアチブのうちの一つです。

 この分野におけるUN Womenの経験は、気候変動が起きている現在においてレジリエンスを強化するためには、土地保有の安全性と同時にその他の生産的資本へのアクセスを確保する、統合的なアプローチが不可欠であることを示しました。従ってUN Womenは、下記4点を優先領域とし、これらの変革を実現するためには、パートナー同士の協力が求められています:

  1. 政治的意思を構築し、差別的な社会および慣習的規範に対処することで、女性の土地保有の安全性を高めます。こうすることで、土地保有に関する成文法および慣習法、政策、そして慣行を促進するでしょう。現行の制度と手続きが、そのような変革を可能にする法的環境を現実のものとするために、土地登記機関の能力も強化されなくてはなりません。

  2. 情報や、労力を節約する技術、農業投入物、そしてサービスへの平等なアクセスを保障することで、女性小規模農家の生産効率を向上し、時間貧困を是正します。そのためには、農業改良普及員の能力開発と、女性農民たちにとってアクセス可能で、タイムリーで、そして扱いやすい気候情報サービスの整備が不可欠です。女性の役割と利用する技術に関する社会規範の変化を促すこともまた必要です。

  3. 指定融資や、直接融資、信用促進のメカニズムなどを通じて、公的および私的な金融機関の融資手続きをジェンダー主流化することで、女性の農民が気候変動に対して農業のレジリエンスを高めるために投資できるよう、金銭的な障壁を取り除きます。気候変動が起きている現在の状況では、貸借人の返済能力をベースとする伝統的なアプローチと伝統的な融資保証から、リスクを管理し革新的な金銭的資産を投機するアプローチにシフトする必要があります。

  4.  女性の農民が協同組合を結成できるよう支援し、グリーン・バリューチェーンへ有意義に参加する能力と、生産から集約、加工そして流通へ移行する能力を強化することで、女性農民のより付加価値の高い市場へのアクセスを向上します。クオータ制や数値目標の設定、女性協同組合の税金控除などによる優遇的アクセスが必要です。道路や持続可能な交通手段、収穫後の貯蔵施設や組合の加工工場などを含む、地域のインフラへの投資は、女性の市場へのアクセスと時間短縮のために不可欠です。

プログラムの仕組み

このプログラムは、グローバル・ポリシー・プロジェクトから支援を受けているカントリー・プロジェクトの一連として実施されます。

このプログラムは、まず初めに、サハラ以南アフリカの6つの国(セネガル、リベリア、マラウィ、モザンビーク、ケニア、ウガンダ)で実施されます。自発的にプロジェクトを始動する国々が、ここでの方法論や経験を活用することが期待されています。ほとんどの国レベルのプロジェクトが、一つまたは複数のUN Womenのキーパートナーと共に実施される予定です。 

グローバル・ポリシー・プロジェクトは、ジェンダー格差を評価するための方法論の開発、データ収集の向上、技術協力の提供、グローバルおよび地域的なパートナーシップの構築、実践するコミュニティの招集、そして結果の分析と記録および教訓の共有を通じたナレッジ・マネジメントを通じて、カントリー・プロジェクトを支えます。

変革のためのパートナーシップ

こうした功績と結果を残す環境を整備するためには、多様なステークホルダーの動員、調整、そしてキャパシティー・ビルディングが必要です。

UN Womenは、各国でのプレゼンスと、地域および国家的なパートナー間で築かれたネットワークを持っており、多国間および地域的開発銀行、国家金融機関、商業および農業銀行、IFAD,WFP, FAOのような専門的な国連機関、そして実績のある非政府組織との連携を通じてこのイニシアチブを実施することを提言します。Open Society Foundationはこのプログラムにおける初めてのパートナーのうちの一つです。

数字で見る農業分野で働く女性

  • 発展途上国における農業労働力の43%は女性です(FAO 2011)。

  • サハラ以南アフリカにおいて、農業分野の非正規労働者の59%は女性です(UN Women 2015)。

  • 女性の農業投入物へのアクセスが男性のそれと平等だった場合、アフリカの総合農業生産高は20%上昇します(DFID 2010)。

  • 世界的に、女性の農地主要者は20%以下しかいません(FAO 2010)。

  • 低所得国の農村地域に住む女性のうち、銀行口座を所有しているのはたったの22%です(World Bank 2015)。