日本政府拠出案件~インドネシア~第2弾
「私たちのビジョンは包括的なイスラム教を生み出すこと。私と違う意見を持つ人がいることはよくあること」―ヒクマ・バファジ
写真:UN Women/Ryan Brown
「私はインドネシアの東ジャワ州にある都市マランにある州立イスラム大学の講師であり、4人の子どもの母親であり、ナフダトゥル・ウラマー(NU)のファタヤット(女性組織)の責任者でもあります。私たちは過激化と不寛容を防ぐために多くの事業を展開しており、東ジャワ州のすべての地区で反急進主義を提唱できる説教者を育成しようとしています。私たちは、「イスラム国 (ISIS、ISIL)」と関係しているが故に国外追放された同郷の人びとを取り扱います。私たちのビジョンは、包括的なイスラム教を生み出すこと。私は、女性と児童保護センターのカウンセラーとして、女性と子どもに対する暴力ケースにも対応しています。
私たちは様々なケースを取り上げているので、多くの反対・抵抗に直面します。今年私は、何人かの男性イスラム教指導者が彼らの生徒を妊娠させたケースと、ある司祭が日曜学校で何人かの子どもを性的に暴行したケースを扱いました。私たちが、これら宗教指導者を裁判にかけようとしたとき、人びとは私たちがこれら宗教指導者に不名誉を与えていると思いました。犯罪を犯した人は、私たちにとっては、もはや宗教指導者として尊敬されるべきではない人となります。
私たちは、LGBTやトランスジェンダーの人びとをも支援しているため、反対・抵抗に直面します。私は同性愛者とトランスジェンダーの母親として知られています。彼ら彼女らは身分証明書を持っていないため、健康保険証を取得し地元の診療所で治療を受けるといったことが難しいのです。
私と違う意見を持つ人がいることはよくあることで、私はそれに慣れています。私について悪い考えを持っている人や、私を変な人だと思っている人に私は慣れています。人びとが私を違う人と思う理由は、私がHIV感染者の人びとや麻薬使用者の妻である女性たちとも友達になるからです。麻薬使用者の妻の多くは家庭内暴力(DV)に苦しんでおり、彼女たちの夫は静注薬物を手に入れやすくするために、わざと彼女たちを麻薬常習者にすることがあります。私たちは250の麻薬中毒者家族を支援しており、これらの家族の女性たちがどのように団結し自分自身をエンパワーすることができるかを考えています。
毎週日曜日に私は自宅を、職を失った女性及び女性と児童保護センターで支援した女性のための技能訓練センターとして使っています。彼女たちは私の家に集まり、ゲイやトランスジェンダーの人びとやHIVと共に生きる人びとなど、様々なグループの人びととも会います。私の子どもたちは、このことを受け入れてくれており、私の夫はこれが私たちの信条―私たちができるだけ多くの人びとを助ければ、私たちと私たちの次世代はどこにいても助けられる―であるため、最も協力的です。
女性は連帯・団結の作り手なので、これは私たちがしなければならないことです。女性は差別され、偏見に苦しんでいます。女性たちは不適切な宗教的解釈や家父長制の文化がもたらす不公正に苦しんでいます。この苦しみは、女性たちが生まれ持つ連帯・団結を構築する可能性をつぶします。最も重要なことは、女性たちをエンパワーし、彼女たちが暴力を経験しないことを確実にして、女性が連帯・団結の作り手に戻ることができるようにすることです。
私が歳をとったら、心理学者や精神科医が常駐するホームを作りたいと思っています。このホームは、子ども、暴力の被害者、非嫡出子、HIVなどの病気に苦しむ貧しい人びと、トランスジェンダーやゲイといった人びと、死ぬことをただ待つ人びとといった社会から必要とされていないと思う人びとが住むことができるホームです。これが私の夢です。ただもちろん、このような夢が叶うことを期待しているだけではだめなので、今日何か行動を起こさなければなりません。」
写真:UN Women/Ryan Brown
ヒクマ・バファジさんは、インドネシアの東ジャワ州にある都市マランの出身で、大学の講師・コミュニティのまとめ役・平和構築者・カウンセラー・母親・妻といったあらゆる役割を担っています。彼女はまた、宗教指導者として、スンニ派伝統主義イスラム運動であり、インドネシア最大のイスラム教組織と見なされているナフダトゥル・ウラマー (NU) の女性組織を主導しています。ヒクマさんは、国内で最も古い寄宿制のイスラム学校(プサントレン)の1つであるAnnuqqayahでの大規模な集会で、女性がコミュニティの平和にどのように貢献しているかに関する議論を導きました。この議論は、後に東ジャワ州のマドゥラ島でインドネシア大統領出席の下、UN WomenとインドネシアのNGOワヒッド財団が共催した国際平和デー記念式の開催につながりました。この記念式は、日本政府が資金を提供するUN Womenの地域事業「Empowered Women, Peaceful Communities~エンパワーされた女性、平和なコミュニティ~」事業の一環として開催されました。
本文(英語)はこちら
「Empowered Women, Peaceful Communities」事業に関する詳しい情報(日本語)はこちら