女性のための所得創出:ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的 保護
課題
ディーセント・エンプロイメント(働きあいのある人間らしい仕事への雇用)と社会的保護を通じた女性による所得へのアクセスは、女性の経済的エンパワーメントと実質的なジェンダー平等の達成を促す最も革新的な方法です。これは女性の主体性と交渉力を強化するとともに、家族やコミュニティーにも幅広い利益をもたらします。
女性の経済的エンパワーメントとジェンダー平等は、生産的な仕事、平等な賃金、職場の安全、社会的保護へのアクセス、そして個人と社会の発展のより良い見通しをもたらす仕事への女性の機会を拡大することによって達成が可能です。
女性の所得創出を確実にするための努力は、ディーセント・エンプロイメントの創出とジェンダー平等を開発と成長政策の主要な目的に据える、マクロ経済の枠組みの促進と実現から出発しなければなりません。包括的な政策は、尊厳ある仕事を創出し、所得および非所得の成果の、より平等な配分を実現させます。
女性と女児が負っている無報酬ケア労働の負担は、彼女たちの時間と機会を大きく制約するので、女性の経済的排斥を持続させ、賃金労働、教育、スキルの開発等を含むたくさんの権利の享受を阻みます。
変革のためのわれわれの戦略
まともな生活のための賃金とより良い生活水準の探求は、全世界の男性と女性に共通する普遍的な願望ですが、労働市場における女性差別を鑑みると、これは女性にとって特に重要なことです。ジェンダーに基づく差別と貧困は、女性の労働参加をしばしば特定の分野や職業、特に低賃金、権利の欠乏、劣悪な労働環境などに特徴付けられる仕事へと追いやります。
UN Womenはフラッグシップ・プログラムを通じて所得創出の促進と女性の収入確保の向上を目指しており、それらは4つの主要分野における活動によって、ディーセント・ワークの機会とジェンダーに対応した社会的保護へのアクセスを拡大することで実現されます。
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女性のための雇用を創出するマクロ経済政策への、政治的コンセンサスの作成
貿易、金融および財政政策を含むマクロ経済政策とジェンダーとの関連性についての、能力開発と意識の向上が必要です。また、市民社会が政策決定者に関与するための能力強化も必要とされています。
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集団行動、労働法のレビュー、および政府と企業の方針の改善を通じた、女性のためのディーセント・ワークの推進
雇用と取引の諸条件の改善のために労働及び生産市場を組織している女性達を支援する必要があります。既存の労働法や労働政策に対するジェンダーの視点での監査は、法律と企業のコミットメントが、既に存在している雇用、解雇、研修と昇進、平等な賃金、そして家庭に優しい就労形態などにおけるジェンダー不平等の是正することを保証します。
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公共インフラ・サービスへの投資を通じた、無報酬ケア労働の認識、削減および再分配
統合的な時間の活用と家計に関する調査への支援を含む、女性の無報酬ケア労働を数値化し、評価するための政策調査と提言が必要です。また、無報酬ケア労働を削減し再分配するための社会的移転と社会的保護および公共サービスへの投資に関する政策議論を広めるため、政府機関や、女性と市民社会団体の能力開発も必要とされます。
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ライフ・サイクルにおける基本的収入の確保を保障する最低限の社会的保護システムを含む、社会的保護への女性のアクセスの向上
女性の社会的保護へのアクセスを阻んでいる障壁を特定し対策を行い、また、意思決定のプロセス、社会的保護の評価や資金手当て、及び公共サービスへの投資に、女性関連組織が参加できるよう支援する必要があります。また統合的なジェンダー対応社会保護システムをより良く管理できるようにするため、政府機関の能力向上も必要です。
プログラムはどのように機能するのでしょうか
このプログラムは、Global Policy Project(グローバル政策プロジェクト)に支援されている、各国のプロジェクトを通して実施されます。まず初めに、5カ国(シエラレオネ、トルコ、イラク、パキスタン、インド)でプログラムが開始されます。グローバル政策プロジェクトは、ジェンダー格差を測定するための方法の開発やデータ収集の向上、技術支援の提供、グローバル及び地域連携の確立、実践コミュニティーの召集、ナレッジ・マネジメント(知識管理)などによって、各国のプロジェクトを支援します。
変革のためのパートナーシップ
このようなプロセスと結果の実現を可能にするような環境を作るためには、幅広いステークホルダーの動員、調整、そして能力開発が必要です。UN Womenの各国の事務所を加えたマルチ・ステークホルダー・パートナーシップは、フラッグシップ・プログラムの成功を確実にするための鍵となるでしょう。主要な連携は、国・地域のパートナー、国・地域の金融機関、研究・教育機関、地域開発銀行、多国間開発銀行、地域経済機関、さらにILO(国際労働機関)、UNRISD(国連社会開発研究所)、UNCTAD(国連貿易開発会議)などの国連専門機関などを含みます。
現状と数値 – 女性とディーセント・ワーク
- 世界的に、女性と男性の労働参画に27%の格差がある(UN Women 2015, Progress of the World’s Women)
- 平均すると、女性の給与は男性より24%少ない。地域別に見ると、賃金格差は南アジアで33%、中東および北アフリカで14%などの幅がある(Ibid)。
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世界の人口の73%はいまだに社会的保護へのアクセスが全く無いか、部分的にしか無いーこれは児童手当、失業手当、妊産婦/育児有給休暇、年金制度を含む(ILO 2014)。
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女性が無報酬ケア労働に費やす時間は、世界中のあらゆる場所で男性よりも多い(UNRISD 2010)。