第2回:久保劍将さん UN Womenモザンビーク事務所 プログラム・サポート・アシスタント(国連ユースボランティア)
2019年1月15日実施
久保劍将さんは2018年11月よりUN Womenモザンビーク事務所で国連ユースボランティア*として働いています。今回は、UN Womenモザンビーク事務所で活躍する久保さんにインタビューを行いました。どうぞお読みください。
【経歴】
立教大学法学部4年。在学中、モザンビーク共和国現地企業にてインターンとして勤務(2017年8月から2018年3月)。国連ユースボランティアプラグラムを通し、UN Womenモザンビーク事務所に派遣。神奈川県横浜市出身。
国連ユース・ボランティアでUN Womenを選んだのはなぜですか。
大学を休学中(2017年4月から2018年3月)、インターンとして勤務した現地企業が「ブリケット」と呼ばれる再生炭を製造し、主にローカルレストランを経営する女性たちや一般家庭に販売していました。いわゆる零細企業のローカルレストランを経営する彼女たちは、ほぼ休むことなく朝から夜まで働き、同時に家事や子育てもこなしていました。そうした彼女たちのたくましさを目のあたりにし、その人々をエンパワーメントする勤務先に非常に共感したと同時に、1つの民間企業にとってその効果をさらに拡大させていくことの難しさも痛感しました。そうした中でより大きな視点でモザンビークを見ること、また様々なパートナーと協働することで彼女たちを別の方法でエンパワーメントすることに興味を持ち、UN Womenで働くことを決めました。
UN Womenでの仕事内容を教えてください。
現在は主に民間企業とのパートナー連携を結ぶ際に行うアセスメントとBeijing+25に必要なモザンビークのレポート作成に関わっています。
まず民間企業のアセスメントは、本部より共有されている手順を参考にいくつかの段階を踏んで実施していきます。そのパートナーと連携を結ぶことでお互いどのような利益を得ることできるのか、それに対するリスクは何かを想定しながら行っていきます。手探りでドラフトをそれぞれ完成させ、プログラムオフィサーに確認しアドバイスをもらい、進めていっています。パートナーシップを結んだ後にどのようなプロジェクトを協働で行っていくか計画は始まっており、派遣期間の都合によりそれらのプロジェクトの実施に関わることができないのは、非常に残念です。
次にレポートは、2020のBeijing+25に向けてまず国ごとにジェンダーに関する全てのステークホルダーの政策や活動をまとめたものを作成する必要があり、事務所代表の監督の下、業務を進めていっています。完成したものは後に地域事務所に送られ、その後本部へ共有が行われます。ここでのUN Women国事務所の役割は、国事務所が実施しているプロジェクトをレポートの内容として提案することと、関連するパートナーとのミーティング等の運営を行い、協働している省庁のレポート作成がスムーズに進むようにサポートを並行して行っています。
その他、マネジメント部門、オペレーション部門の日々の業務を手伝い、人手が足りないときはコミュニケーションの業務を担当することもあります。責任とやりがいを同時に感じながら業務する日々で、非常に充実しています。
仕事の難しさや、やりがいを教えてください。
私自身が国連ユースボランティアとして派遣されており学部生であるため、自分自身の持つポルトガル語運用能力と専門スキルが十分でないことが、現在の仕事において難しいと感じていることです。事務所内は英語でコミュニケーションが行われるものの、モザンビークはポルトガル語圏であるため、パートナーである政府系機関やNGOとのやりとりはポルトガル語で行われます。そうした際に会議やミーティングの理解が不十分になってしまい、どのような話し合いが行われたのか、また次にどのように動いていくのかを自分自身で判断することが難しく、同僚の力を借りないと業務を進めることができないことがあります。それと同様で、専門的な知識や分野、経験がまだ十分に備わっていないがために、自分自身の専門性を生かして業務に関わっていくことがあまり多くありません。それにもかかわらず希望していた業務に部分的には関わることができており、任せてくれている上司や同僚には感謝しています。
やはり政府系機関と連携して仕事を行うことは高い視点で物事を考える機会が多くなってしまうため、現地の人々やコミュニティにおける直接的な結果は見えづらいですが、国レベルのダイナミックな仕事に関わることができていることは非常にやりがいを感じます。これは現地企業でインターンとして勤務した際に異なる視点でモザンビークを見てみたいと感じ、今回の派遣で希望していたことなので、非常にやりがいに感じています。
例えば、仕事を開始してすぐモザンビークのニュシ大統領をはじめとする中央省庁の長、地方省庁の長がHeForShe社会連帯運動に署名をするという式典がありました。その式典で同僚たちが喜んでいる姿を見ていたものの、最初はどれ程大きなことかは理解しきれていなかったのですが、翌日の新聞の一面を飾り、国内のニュースで大きく取り上げられ、また英語のインターネットニュースに掲載されているのを見て、後からその式典の意味する大きさを知りました。モザンビークの国内で大統領を主導として、何か大きなものが動いていく瞬間に立ち会うことができ、非常に貴重な機会であったと感じています。
国連での仕事は厳しい面も多いかとは思いますが、それでも成し遂げようというパワーの源は何でしょうか。
幸いなことに厳しい状況に陥ったことはありません。今回はオフィスの中での勤務が非常に多く、誰のために働いているのかイメージをすることが難しく感じることも良くあります。しかしながら、今行っている仕事は、前年の滞在で出会ったモザンビークの人々の生活向上に間接的につながるということがモチベーションになっているかと思います。
これからの目標を教えてください。
残りの派遣期間が短く、現在取り組んでいるパートナーとのプロジェクトやBeijing +25のレポート完成は残念ながら目にすることができません。UN Womenモザンビーク事務所での自身の目標としては、現在関わっている業務を残りの期間、全力で取り組み、できる限り完了に近づけたいです。
昨年と今年のモザンビークでの滞在、勤務経験を通して、いわゆる開発という分野に関心があります。No one left behind(誰一人取り残さない)の考えに共感しているように包括的な法律整備や政策策定に関わっていきたいと感じる一方で、草の根的組織の持つ資源を最大化させていくことにも興味があります。どのような進路を選択するかは、まだまだ悩んでいます。
UN Womenを目指す人にメッセージをお願いします。
UN Women以外の他の国際機関や日本での民間企業での経験がないため、UN Womenで働く魅力をお話しすることは難しいですが、現在働いてみて多くの方々がお話されているように、多様性に溢れそれぞれの個性が尊重され、また熱い志を持つ同僚がいる環境で働くことのできることは、働く上での魅力に感じています。
私は前年のモザンビークのインターンの経験が大きなきっかけとなって、このポストに応募しました。決して最初から国連で働くことを計画していたわけではありません。そんな私がアドバイスとして述べるならば、機会は来るべくして訪れるのかもしれませんが、自身の興味に向かって積極的に機会を取りにいくことが大切であると思います。自分自身と向き合い、興味のあること、やりたいことに向かって全力で頑張ってください。
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* 国連ユースボランティアとは、日本国内の大学と国連ボランティア計画(UNV)が連携して実施している事業であり、選出された大学生を国連ユースボランティアとして派遣しています。詳しくはこちら(外部サイト)。
【関連リンク】
- UN Women モザンビーク事務所について(英語):こちら