UN Women(国連女性機関) ジンバブエ事務所UNV 吉田あかりさんへのインタビュー

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―UN Women 日本事務所のインターンがUN Women ジンバブエ事務所でUNV(国連ボランティア)をご経験された吉田あかりさんにインタビューを行いました。

UN Womenジンバブエ事務所での吉田さんの様子

【過去の経験】

Q. 学生時代の興味分野、大学での研究テーマについて教えてください。

幼い頃から国際協力に関心があり、高校生の頃に特にジェンダー分野への関心が強まりました。

大学では国際政治、中でも広報外交と呼ばれる分野において、自衛隊の広報ポスターにおける性的客体化について研究しました。

Q. なぜ高校生の頃からジェンダー分野に興味を持ち始めたのですか?

高校生のときに偶然「名誉殺人」に関する記事を読んだことがきっかけです。名誉殺人とは、家族の名誉回復のために名誉を傷つけた人を殺害するという風習で、その多くが親が決めた相手と結婚しなかったり自由恋愛した女性が家の名誉を傷つけたとして、実の父親や男兄弟などに殺害されるというケースです。自由恋愛のように日本で何気なく行われていることが原因で、そして主に女性だけが殺害されるということに衝撃を受けて調べるうちに名誉殺人の要因の一つであるジェンダー問題に興味を持ちました。

Q. 学生時代の課外活動の中で、今に活かされているものがあれば教えてください。

学生時代は一つのことに長く取り組むというよりは、複数のことに好奇心を持って取り組んでいました。なかでも、カンボジア農村地に住む子どもたちに英語を教える6週間のインターンシップ経験は印象に残っています。「自分は現地に受け入れてもらっているんだ」という心持ちで現地の人と接する大切さを学びましたし、水道もガスも電気も通っていない農村での生活を通して、日本と異なるタフな環境で過ごすことへの慣れが構築されたと感じています。

UN Womenジンバブエ事務所での吉田さんの様子

【UN Women ジンバブエ事務所での活動について】

Q. どうしてUN Women、またUN Women ジンバブエ事務所で働きたいと思ったのですか?

大学生になり、仕事としてジェンダー平等達成に携わりたいと考え始めた際に、ジェンダー平等達成に関して影響力があるUN Womenでいつか働けたらと考えていました。勤務地としてジンバブエをあえて選んだというわけではないのですが、偶然関心事項のポジションが出ていたのがUN Womenジンバブエ事務所でした。ジンバブエのことは全くといっていいほど知らなかったのですが、アフリカを含むいろいろな国で働いてみたいという思いは昔からあったため、渡航前から現地での活動が楽しみでした。

Q. UN Womenジンバブエ事務所で一番印象的な活動は何でしたか?

私は現地でコロナワクチン接種率向上及び女性生計支援プロジェクトに携わっていました。プロジェクトを視察した際に目にした、裨益者である農村部の女性が、プロジェクトの一環である石鹸作りで得た収入を原資にヤギの繁殖や養鶏を通じて持続的に収入を得ることが出来るようになったことを誇らしげに話す姿はとても印象に残っています。

Q. ジンバブエで特に深刻なジェンダー問題とその社会的・文化的な原因について教えてください。

いくつかあるのですが、GBV (Gender Based Violence: ジェンダーに基づく暴力)は最も深刻な問題の一つで、ジンバブエの15-49歳の女性のうち1/3もの人が身体的な暴力を経験したことがあるというデータもあります。背景としては伝統的な家父長制の影響が強く、コロナ禍においては家庭内暴力件数が増したこともあり、UN Womenジンバブエ事務所も力を入れて取り組んでいました。また、児童婚も大きな問題となっており、ジンバブエの15-19歳の少女の内1/4が結婚しているというデータもあります。特に貧困家庭において、ブライドプライス(結婚時に新郎側の家から新婦側の家に贈られるお金や家畜など)を得るために娘を早く結婚させることもあります。児童婚は早すぎる妊娠にもつながり、実際私が訪れた農村地でも子どもの母親というより姉に見えるような幼い母親を多く見かけました。

【ジェンダー課題への考え方】

Q.身の周りの男性にジェンダー課題を自分事として捉えてもらうにはどうすればいいと思いますか?

難しい質問ですが、まずジェンダーと聞いた瞬間シャットアウトしてしまう男性に対して、ジェンダー課題は男性である自分にも関係のあることなのだと知ってもらう必要があると思います。それがファーストステップでもあり一番難しいことなのだと思いますが、例えば、自分のパートナーや、父親など身近な人とジェンダー課題について話すことは方法の一つなのかなと思います。そこから、現在女性が置かれている構造的格差のことであったり人権としてのジェンダーについて学んだりしてもらえたら理想だと考えます。

【今後の展望とメッセージ】

Q. 今後のキャリア設計や、またそのキャリアの中で解決したい課題を教えてください。

明確なキャリア設計はないのですが、キャリアを通じてジェンダー平等達成の実現に携わっていきたいと考えており、大学院での経験を通して様々なジェンダー課題のどの課題にどう関わるかなど具体的なことを考えていきたいと思います。「もし生まれた性別が違ったら全く別の人生があった」、ということをなくしたいという想いがベースにあります。

Q9. 日本の学生の皆さんに何かメッセージをお願いします。

私もまだまだ勉強中でメッセージを出せるような立場ではないのですが、ジェンダー課題はあらゆる分野に存在するため、日常生活を送る中で何か違和感を感じたりしたらその違和感を無視せず、なぜそういうことが起こっているのだろうと立ち止まって考えてみてほしいと思います。 

【略歴】

日本の大学卒業後、民間企業及び公的機関で合計3年半勤務後、昨年7月よりUN Women ジンバブエにて9か月間UNV*として勤務。今年9月から大学院に進学。