第3回:谷津都萌子さん UN Womenタンザニア事務所 プログラム・アナリスト ー女性および女児に対する暴力の撤廃(EVAWG)

2019年2月5日 実施

谷津都萌子さんは、2018年よりUN Womenタンザニア事務所にて働いています。彼女のインタビューをぜひご覧ください。

UN Women タンザニア事務所にて。 Photo: UN Women/Tsitsi Matope 

UN Women タンザニア事務所にて。Photo: UN Women/Tsitsi Matop


【経歴】

UN Women タンザニア事務所で、女性と女児に対する暴力撤廃に関する事業を担当。ニューヨーク州立大学国際関係学科卒、日本GE勤務後、慶應義塾大学看護医療学部でパレスチナ女性の仕事と家庭の両立に関する意識調査を行い、マヒドン大学公衆衛生学部修士課程ではタイの若年妊娠と学校継続について研究。UNFPA東京事務所、アジア・パシフィック地域事務所にてインターンシップ経験後、広島平和構築人材育成事業(HPC)を通し現職。神奈川県出身。


 

UN Womenでの仕事内容を教えてください。

 

開発におけるパートナーと女性の地位に関する現地調査にて。Photo: UN Women/Tomoko Yatsu 

開発におけるパートナーと女性の地位に関する現地調査にて。Photo: UN Women/Tomoko Yatsu

現地NGOと協力をして、各地で女性や女児への暴力の撤廃に向けたプロジェクトを行っています。自治体関係者や住民を対象に、暴力に対する意識の変化を図ることで、家庭、学校、市場、病院など地域全体で暴力が起こることを予防し、女性や女児が希望を持って、いきいきと生活することのできる環境づくりを目指しています。タンザニアでは、40%の女性が身体的暴力を、17%が性的暴力を受けています。女性の58%と男性の40%は、「夫は妻に暴力を振るう権利がある」と考えています。日常における行動や暴力について、また、法的な措置の取り方や被害を申し出る方法について話し合うことで、行動を改める人や、警察に届け出る人が増え、人々の生活や考えが少しずつ変化しています。関連プロジェクト以外には、政府関係者や開発におけるパートナーと共に暴力撤廃イベントの開催、また、国のガイドライン作成におけるアドバイスや、他の国際機関と暴力撤廃に関する包括的アプローチについて会議も行います。

 

仕事での難しさや、やりがいを教えてください

現地CSOとプロジェクトについて話し合う様子。Photo: UN Women/Jacob Kayombo 

現地CSOとプロジェクトについて話し合う様子。Photo: UN Women/Jacob Kayombo

国際機関は、文化や習慣の異なる環境で生活してきた人、経験を積んできた人が集まる組織です。このような職場環境では、同僚との間で仕事の仕方、優先順位の付け方、プロジェクトの取り組み方について違いを感じることがあります。同僚ははっきり自分の意見を主張してくるので、私も根拠を持って考えを伝える必要があり、時にはなかなか合意に達せず難しく感じる時があります。しかし、お互い同じ目標に向けて仕事をしているので、話し合いを重ねることで理解も深まり、仕事が一歩前に進みます。そしてチームで作り上げた仕事が国内で評価を受け、各地で同じ目標を掲げたプロジェクトが立ち上がる可能性が出てくると、タンザニアの女性や女児の生活環境向上に少しでも貢献できていることを実感でき、とてもやりがいを感じます。

 

国連での仕事は厳しい面も多いかと思いますが、それでも成し遂げようというパワーの源は何ですか。

 

この仕事を始めてからは、暴力に関する被害についてさらに頻繁に触れるようになりました。家庭内暴力、育児放棄、レイプ、学校や職場での性被害、児童婚や女性性器切除、世間体や“常識”による事件の隠蔽や黙認など、暴力に関する事例に触れるたびに、女性と男性の力関係による不平等な社会に胸が苦しくなります。家庭や学校、職場や地域というそれぞれの社会のなかで、一生のうちに何かしらの暴力に直面したときに、本当に夢や希望を持ち続けて、その人らしく活躍できるでしょうか?女性が活躍できる社会をつくるためには、さまざまな方法がありますが、私は、個人や社会からの暴力がある限り、女性や女児が活躍できる社会の実現は難しいと考えます。こうした考えと、それを支えてくれる家族や友人の存在が、この仕事を続けていくことのできるパワーの源となっています。

 

 

これからの目標を教えてください

 

女性に対する暴力撤廃の国際デーにて、イベント主催メンバーと。Photo: UN Women/Tomoko Yatsu 

女性に対する暴力撤廃の国際デーにて、イベント主催メンバーと。Photo: UN Women/Tomoko Yatsu

女性と女児に対する暴力の撤廃に取り組むにあたり、さまざまな分野における理解を深めていくことがこれからの目標です。暴力には身体的、性的、精神的なものがあり、また、児童婚や早期妊娠、女性性器切除も性別における暴力に含まれます。私のチームは少人数のため、「今から行われる会議に参加して欲しい」と、突然依頼を受けることがあります。そのような会議ではUN Womenを代表して参加するため、国内における現状や世界における事例など常に把握し、意見を求められることがあります。場合によっては、この時の発言により、UN Womenが女性と女児に対する暴力の撤廃にどう関わることができるか決まることがあります。このような状況で、地域住民の声やNGOとの経験を反映させ、また、国内外の状況を踏まえ、難しい課題とどう向き合うべきかUN Womenとして発言ができるよう、関連分野における理解をさらに深めていきたいです

UN Womenを目指す人にメッセージをお願いします

UN Women タンザニア事務所にて。 Photo: UN Women/Tsitsi Matope 

UN Women タンザニア事務所にて。Photo: UN Women/Tsitsi Matope

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは、すべての分野において取り組まれる必要のある課題です。興味のある分野や現在行っている活動の中で、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが実現されているか常に意識し、もしギャップを見つけたらぜひ取り組んでみてください。ひとつひとつ経験を重ね、UN Womenの理念と活動内容がご自身の興味と合致するときには、やりがいを実感しながら働くことのできる環境がUN Womenにはあります。職場のスタッフは、仕事の時はパッションを持ちながら真剣に仕事をしていますが、席を離れると笑顔で和気あいあいと明るい空気が流れていて、楽しく働くことができます。いつか皆さんと一緒に、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに取り組んでいけることを楽しみにしています。