国連女性に対する暴力撤廃信託基金

写真:国連女性に対する暴力撤廃信託基金/Phil Borges

国連女性に対する暴力撤廃信託基金(国連信託基金)は、女性と女児に対するあらゆる形態の暴力撤廃に特化して取り組む唯一のグローバルな助成金制度です。

1996年に国連総会により創設されて以来、国連信託基金は136の国と地域で、426のイニシアチブに対し、1億1600万米ドルの支援を実施してきました。2015年には29の国と地域にわたる33のプログラムに対して1,286万米ドルを拠出し、100万人以上の女性、女児、男性、男児が利益を得ました。

国連信託基金は、国連総会決議50/166を以て創設されました。UN Womenは国連システムを代表して、女性と女児に対する暴力の蔓延を防ぐ革新的なアプローチを支援するため、国連信託基金を管理しています。国連信託基金は、非政府組織、政府、そして国連のカントリー・チームと連携して、下記を実行します:

  • 青年期の女児や、先住民族あるいは少数民族の女性など、特に暴力の危険に晒されているグループの女性をエンパワーし、少年と男性、伝統的および宗教的なリーダーへ戦略的にアプローチすることで、女性と女児に対する暴力を防止します
  • 法的支援や、心理社会的カウンセリング、ヘルスケアなどのサービスへのアクセスの拡大。サービス提供者が暴力の被害を受けた女性と女児のニーズに効果的に対応できるよう、能力向上を行います。
  • 女性と女児に対する暴力に関するデータの収集と分析、そしてあらゆる機関が女性に対する暴力への取り組みに関してより効果的で、透明性が高く、説明責任を持つよう保証することを通じて、女性と女児に対する暴力に関する法律、政策そして行動計画の実施を強化します

タジキスタンでは、家庭内暴力に対して基本的な保護サービスへのアクセスを向上し、新しい法律の施行を支援することで、地方の女性にも救援の手が届くようにしました。ナジョティ・クダコンは、家庭内暴力被害者のための国内唯一の保護施設を運営しています。さらに、遠隔地に女性の支援団体を設立し、支援ネットワーク拡大をサポートしています。参加者はコミュニティに積極的に働きかけ、イベントの開催や、前述の新法と女性の権利に関する情報の作成・共有を推進しています。さらに、設立された支援団体は、すぐに暴力被害者のための効率的な紹介システムとして機能し、訴訟を起こすための法的支援など、さまざまなサービスへのアクセス改善に役立っています。

ガンビアでは、支援団体のGAMCOTRAPが、国連信託基金の支援を受けて、女性器切除(FGM)に終止符を打つため、FGMが引き起こす弊害について教えるトレーニングを開催しています。GAMCOTRAPはFGMの廃止を支援するために村長の力を借り、今では58のコミュニティで活動を展開していまあす。これまでに、コミュニティのリーダー研修やワークショップを開催し、300名以上の女性が自分と娘の権利を主張できるようにエンパワーしてきました。自分の娘にFGMを受けさせないと語る若い母親は64%にまで登っています。一方、コミュニティのリーダーは女児とコミュニティを守る方法を初めて話し合うようになりました。2015年にガンビアはFGMを犯罪と定め、禁止する法案を可決しました。

2015年に女性対象となったネパールのザ・ストーリー・キッチン(The Story Kitchen)では、「正義のためのサハス(勇気)」プロジェクトを10の郡で実施しました。このプロジェクトでは、紛争や暴力の被害を受けた女性が、国の真実和解委員会(The Truth and Reconciliation Commission)で証言するといった、正義へのアクセスに必要な新しいスキルを身に着けることを支援しています。ワークショップの中で、被害女性はお互いの経験を共有します。その過程で、長い間自分の中にしまい込んでいた問題について話すことが次第に楽になっていきます。ある参加者は、「目の前で15人が殺されて以来、笑顔を忘れてしまいました。このワークショップに参加してほかの女性と出会い、笑顔を取り戻すことができた」と語ります。補完する取り組みの一つとして、女性と女児に対する暴力に関する報道の質を向上することが挙げられます。新しいガイドラインは、ジャーナリストが、倫理的な報道に対する広範な基準を策定した国の協議会の支持のもと、より慎重で責任あうr方法で紛争などの問題を取材できるよう定めています。

コロンビア、チリ、エルサルバドルでは、国連信託基金のおかげで市民社会団体Sur Corporación de Estudios Sociales y Educación(Sur Corporación)が女性や女児に対する暴力を止める法律や政策の執行に関して警察に研修を行うことができました。700人を超える警察官が、暴力から自由な生活をおくる女性の権利という原則に根ざしたコースに参加しました。参加者は、暴力がどのような形で現れるのか、どうすれば対応を早められるか、事件の追跡やフォローアップの方法などを学びます。国際交流プログラムでは、有望な実践例や体験を共有します。3国すべてで警察と女性団体の間のコミュニケーションが改善され、女性や女児に対する暴力問題の規模にちて共通の理解が生まれました。研修終了後は、総合フォローアップのワークショップで警察と女性団体が一緒に集まり、ジェンダーに基づく暴力の防止と対応のために特に重要な手続きや規定を洗い出しました。

ベトナムでは、学校の内外においてジェンダーに基づく暴力が非常に多く、女児のエンパワーメントやジェンダー平等実現の大きな障害となっています。児童のための開発団体プラン・ベトナムは、国連信託基金を使って問題解決のため「ジェンダーに配慮する学校の試験モデル」を推進しています。現在ハノイ全域の中学校20項を実施中のこのモデルは、学校を安全で子供に優しい場所にし、責任の所在を明確にすることを目指しています。2014年松までに全20校の教師が、学校に関連したジェンダーに基づく暴力についての総合マニュアルを使用し、思春期にある16,000人の男女生徒と話をしました。例えばジェンダー不平等な慣習に気づき、疑問を呈すること、日常生活における暴力などの問題について学びました。何百人もの生徒が新設された学校カウンセリングサービスを利用し、心理社会的サポートを受けました。

アラブ諸国では、ヨルダン女性連合がエジプト女性支援センター、モロッコの女性アクション同盟と連携して、女性人身売買防止の地域行動を立ち上げました。ヨルダンでは35団体が心理社会的、法的サポートへの紹介などを通じてサービスを改善しました。エジプトやモロッコでは、特に被害に遭いやすい地方貧困地域での活動で、リスクや法に定める権利について認識向上を行いました。ネットワーキングやコーディネートの強化により市民団体や政府関係者、司法機関の活動を相互に結びつけて人身売買行為を発見、阻止する動きが始まり、また人身売買取締法起草の推進にも貢献しました。

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