サイマの手紙

日付: 2021年9月7日

バングラデシュの首都ダッカにある、タランゴ(*1)の女性シェルターには、60人の女性・女の子が住んでいます。この手紙はその1人、カトゥーン・サイマ(仮名)さんが、タランゴのCEO(最高経営責任者)であるヤスミン・コヒヌールさんに宛てて書いたものです。

 

 

Letter from Saima. Illustratration: Miho Watanabe イラスト: Miho Watanabe

 

コヒヌールさん

 

私の人生は本当に変わった。もう自分でも自分が誰かわからないくらい。

 

私は子どもの頃からずっと怯えながら暮らしていたお父さんが私を結婚させたとき、私はまだ結婚できる歳になっていなかったそれなのに地元の有力者はそんな結婚を認可して、公式文書に書く私の年齢をごまかした。警察が来たけど、村の権力者たちは警察に賄賂を払って追いやってしまったの。私の夫になった人は冷酷な人だった。私の結婚持参金が足りないと言って私を痛めつけた(*2)そんなときも、村の人たちは誰も私を助けてくれなかった。助けてくれたのは、あなただった。

 

タランゴの活動については、以前聞いたことがあったの。だから夫を置いて家を出た日、私は真っ先にここに駆け込んだ。タランゴは私の命を救ってくれた。ここのシェルターに来てから、私は安全な場所に住み、体に良い食事をし、いつでも必要な時にお医者さんに診てもらえる。シスターグロリアさんは思慮深い、親切で思いやりのある人。彼女から心理社会的カウンセリングを受けることができたことは幸運だった。それから私はたくさんのスキルを身につけたの。例えば空手の護身術、縫製、仕立て。だから私は自分の身を守って、仕事を見つけることができるって自信がある。

 

コヒヌールさん、他に行くところのない私みたいな女の人たちを支えてくれてありがとう女の子に生まれたからって、男の子ができて私にできないことはない。あなたのおかげで私はそのことに気づく勇気をもらった。本気でやれば、女の子はなんだってできる。

 

ここのシェルターから出たら、私は部屋を借りるつもり。働いて貯金して、自分が安心できる場所を作るの。それから弟と妹が教育を受けて、良い人生を歩めるよう、見届ける。村の人たちに見せたいの。私がどれだけ自立して生きているのか

 

コヒヌールさん、できればもっと多くの女性を受け入れて。まだ数えきれないほどたくさんの女性があなたの助けを必要としているから。もしそんな女性を受け入れて、彼女たちにチャンスを与えれば、もう彼女たちは絶望に苦しむことはなくなるでしょう。そして、彼女たちも自立した、力強い人になるの。今の私みたいに。

 

お祈りを。

 

サイマより

 

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1 訳注: 1989年にバングラディッシュで創立された非営利のNGO団体http://www.tarango.org/  

2 訳注:バングラデシュでは婚姻にあたって女性の家から男性の家に財産を送る習慣があり、価値の低い財産しか用立てることのできなかった女性の婚家での立場が弱くなり、男性側はそれをもって女性に対する虐待を正当化することがあります

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新型コロナウイルスのパンデミックの最中日本政府の資金提供を受け、タランゴUN Women(国連女性機関)とのパートナーシップを通し暴力被害女性へ必要不可欠な支援サービスと経済エンパワメントのための支援サービスを組み合わせた、新しいシェルターモデルを展開しました暴力を経験している女性や女の子たちに、包括的で質の高いサービスを提供するためのガイドラインであるッセンシャル・サービスパッケージを取り入れたタランゴの女性シェルターの成功と学びに基づき、 UN Women統合シェルターモデルのツールキットを作成し、バングラデシュ全国のシェルターで展開していきます。これは、UN Womenが取り組んでいる、女性と女の子たちに対する暴力における必要不可欠な支援サービスの一環で